「電車での乗客の表情も旅行者にとっては”日本の印象”になるんだ……」と気づかせてくれた親友の韓国人の何気ない質問

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暑さを吹き飛ばしてくれるような雨に歓喜しつつも、雨が降れば降るほど、傘を使えば使うほど、訪れる地すべてに傘を忘れ続けて、先日ついに家から傘が一本もなくなりました。
こんにちは、イロドリインターン生の桑原です。

最近、東京に行ってきました。
「大学三年生の夏、意識高くサマーインターンで東京に訪れた」
とかいう名目ならば、箔がつくところですが……。

このタイミングで東京観光をしてきました。

というのも、わたしは8ヶ月の間、カナダで留学をしていました。
その留学先で親友になった韓国人の女の子から、
「東京行きの航空券がすごく安かったから、日本を旅行することにしちゃったよ!」
と言うメッセージが携帯の画面に表示されました。

わたしはその報告にすごく嬉しくなって、
「会いに行くしかない!」
と夜行バスで東京に駆けつけることに決めたのでした。

10時間バスに揺られ、池袋に降り立った早朝。
凝り固まった身体と、バスの空調でお腹の調子が悪く、東京に来た瞬間から泣きそうな中で、周りを見渡しました。
24時間営業の店舗がそこら中に点在し、その周りには朝まで盛り上がっていたのだろうと見て取れる人がそこら中にいて、
「やっぱり都会ってすごいなあ」
と大阪からやってきた岐阜県出身の田舎者のわたしは思ったのでした。

とにかく、「溢れ出る東京感」に圧倒されながら、友達を待つために、宿泊する浅草のホステルに向かいました。
往復夜行バス、東京1泊だというのに、キャリーバッグに荷物を詰め込みすぎた要領の悪いわたしは、JR、地下鉄、都営、メトロと複雑な路線を乗り継いで、階段を登って、下って、としていると、
「荷物が重いよ〜〜〜、助けてアンパンマーン」
と心のなかで叫ぶしかありません。

なんとか必死になりながら、無事にホステルに着き、一息をつきながら友達をまっていると、彼女も到着。
彼女はわたしよりも4ヶ月早く韓国へ帰国したので、実に7ヶ月ぶりの再会でした。
久々に彼女と会って、テンションは最高潮。
しかし外に出て暑さにやられて、すぐにテンションは急降下。

とりあえず浅草の老舗っぽいお蕎麦屋さんに逃げ込んで、今まで会えなかった間、お互いになにが起こっていたのか、おもしろい話、恋バナ等々の女子トークをしながら、冷たいお蕎麦を楽しみました。

さあいよいよ東京観光の始まりです! 
今回の目的は彼女が東京を最大限に楽しんでもらうこと。
彼女が行きたいところをリストアップしてくれていたので、それに沿って東京を巡れるだけ巡ろう! というテーマのもと観光は進みました。

ただ、この目的を達成するためには、東京の複雑な路線、満員電車といった数々のミッションをコンプリートせねばなりません。

本当に東京の電車は意味がわかりませんでした。
日本人のわたし(田舎っぺ)でさえも理解できないので、日本語を読めない外国人の方はもっと大変だと思いました。
ミッション・インポッシブルとはまさにこのことなのではないのでしょうか。

さまざまな路線をまたぎにまたぎ、なんとか東京の電車に慣れた頃、友達はぽつりとこう言いました。

「なんで電車に乗ってる人の顔は怖いの?」

ちょうど通勤ラッシュの時間だったので、多くのサラリーマンが電車に乗っていました。
たしかに彼らの様子は疲れているように見えます。
なんとも深刻そうな、難しい顔です。
サラリーマンに限らず、他の乗車客も楽しそうには見えません。

電車の中だけではなく、駅で道を急ぐ彼らは、必死の形相です。
「電車に乗る」ということに必死で、どれだけ人とぶつかろうとも、気にする素振りは見えませんでした。

とりあえず彼女の質問に答えようと頭をひねった結果、

「きっと仕事とかいろいろ大変で周りを気にしてられないんだよ」

としか答えることができませんでした。

しかしながら、彼女の疑問から浮かびあったこと。

「電車の中の日本人は客観的に見ると怖い顔に見える」

わたしは留学や旅行を通して、
・カナダ
・アメリカ
・韓国
・タイ
の4ヶ国を訪れました。

どの地でも外国人らしくキョロキョロしながら、公共交通機関を使っていろいろな場所に行きました。
でも、どの国のどの電車のなかにいても、友達が思うような疑問が浮かびませんでした。

むしろ、「なんか楽しそう」と思うことのほうが多かったほどです。

電車内で自撮りをキメてる人もいたり、キョロキョロしているわたしに微笑みかけてくれたり、重い荷物をもっていたら手を貸してくれる人も居たり、友達と旅行しておそろいの服を着ていたら写真取らせてくれと頼まれたり、ラジバンダリ。(古い)

こんな雰囲気を感じられたことで、きっとこの旅行も楽しくなるんだろうとワクワクしたことを覚えています。

異国の地にやって来た旅行客は周囲に興味津々です。
「どんな人がいるんだろう」
「どんなものがあるんだろう」
「どんな場所なんだろう」
海外旅行は、現代人がスマホの画面ではなく、上を向いて、周りを見渡せる唯一の機会なのではないのでしょうか。

東京の複雑な路線と戦いながら、安定した通信(Wi-Fi)を持たず、
「本当に目的地にたどり着くことができるのだろうか」
と不安に駆られながら電車内にいる訪日客の彼らが見える光景。

それは「見渡す限りの怖い顔」です。

ただでさえ不安なのに、余計に不安をあおると思いませんか?

この怖い顔の裏には様々な事情があると思います。
でもそれを彼らは知りません。

ただ普通に怖く見えるわけです。

これに気づかされたとき、一気に胸が痛くなりました。

わたしは旅行先で電車の中で人間観察をするだけで、あんなに楽しい気持ちになったことをがあるのに……。
訪日外国人の方はこの気持ちを味わうことが出来ていないかもしれないのです。

多忙を極める日本人の多くは、自分のことに精一杯で、周囲を気にする余裕がない人が多いと思います。
もちろん、電車の移動時間なんて特に。

わたしも、その日の朝のように、目的地に急ぐことに必死で、周りなんて気にしてられないことがほとんどです。
そして、目的を成し遂げてあとは家に帰るだけというときは、無に等しい表情でぼーっとしたいと思ってしまいます。

そもそも、「電車の中は静かにする」ということが一般常識なので、電車内で楽しそうに振る舞うことはマナー違反につながるという意見もあることでしょう。

しかし、
「日本の怖い雰囲気ただよう電車内を、海外のようにわちゃわちゃした、やわらかい雰囲気に変えていこう」
と言いたいわけではございません。

あなたがこのメディアに訪れているということは、インバウンドに興味がある人が多いと思います。

そこで、訪日外国人にむけたビジネスにおいて、日本お得意の「おもてなし」をすることで、彼らを喜ばせたい! と考えていると思います。

旅行客にとって、異国の地に滞在する時間は、すべてその旅行の思い出になり得ます。
電車での移動中のときだって、いつなんどきの出来事も。

せっかく日本という国に遠路はるばる足を運んでくれた彼らには、最初から最後まで良い思い出を作って欲しいですよね!

だからこそ、わたしたちは、ナーバスになっているかもしれない彼らの心境に寄り添ってあげるべき存在だと思います。

例えば、電車の中の話だけでなく、街中にいる彼らが困っている素振りを見せていたら、声をかけてあげる。
彼らとすれ違うときに微笑んであげる。

このような小さな積み重ねが、日本に対するポジティブな印象を彼らに与えることにつながります。
そして「また日本に来たい!」と思ってもらうきっかけになり得るはずです。

その地を旅する目的は人それぞれで、各々のプランに沿って旅行をしていると思います。
ただ忘れてはならないことが一つあります。
旅行というイベント全体は、そのプランだけで成り立っているわけではないということです。

旅行プランに組み込んでもらうために、訪日外国人に喜ばれるビジネスを考えることはもちろん重要です。
しかし、それだけではなく、旅行全体の印象が最終的に「楽しかった!」と思ってもらえるようにサポートをするという視点も必要なのではないのでしょうか。

ビジネスとしてのおもてなしだけじゃなく、ふとした時にも、日本人としてのおもてなし精神で、彼らの日本の思い出にイロドリを添えましょう!


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