マレーシアで2年半暮らした私がムスリム対応を阪神ファンに例えてわかりやすく解説してみた

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こんにちは。イロドリの福島(@maxafuku)です。

私は前職時代に1ヶ月のうち半分マレーシアに住み、半分日本に住むという生活を2年半ほど続けていました。
マレーシアのクアラルンプール市内にコンドミニアムを借りて生活し、何人かのマレーシア人の友達もできました。

マレーシアは多民族国家でイスラム教を信仰する人が約60%、その他にもヒンズー教や仏教、キリスト教などさまざまな宗教を信仰する人が暮らしています。

近年外国人観光客が増え、さまざまな宗教を信仰している人に配慮する必要性が高まってきています。
その中でも最近よく話題にあがるのがムスリム対応です。

しかし、「ムスリム対応について色んな人から色んなことを聞くけど、何をどう対応したら良いのかわからない」という人は私の周りにもたくさんいます。

そこで今回はそんな人に向けて、ムスリム対応を阪神ファンに例えてわかりやすく説明したいと思います。

阪神ファンにも色々なスタイルのファンがいる

私が住む関西にはたくさんの阪神ファンがいます。
ちなみに私も阪神ファンです。

そんな阪神ファンですが個人によって阪神を応援するスタイルはさまざまです。
応援のスタイルを図にするとこんな感じに分けれると思います。

年間シートを購入して毎試合観戦する人や、ライトスタンドで毎試合応援するという、阪神中心の生活を送っているファンが一定数います。この層とその他の層の間には非常に高い壁が存在します(笑)

そして、たまに甲子園で観戦したり、居酒屋やスポーツバーで観戦するというファンもいます。
また、自宅で有料チャンネルを契約して毎試合TVの前で応援しているファンもいれば、地上波で放送がある時だけ観るというファンもいるでしょう。
さらにリアルタイムで試合は観れないけど、夜のニュースや翌朝の新聞、ネットで結果をチェックするというファンの人もいます。

その他にも色々なスタイルの阪神ファンがいると思います。
しかしどの応援スタイルが正解というものではありません。

みなさん阪神タイガースが好きで、それぞれのスタイルで応援しているのです。
どの人が一番のファンなのか? と比べるものでもありません。

ちなみに私は仕事の都合で毎試合応援に行ったり、TV観戦したりすることはできませんが、試合の結果はニュースサイトでチェックしています。
そして週末の時間があるときにはTV観戦もしますし、年に1〜2回は甲子園へ観戦に行きます。

居酒屋が阪神ファンを集客するには?

例えばあなたが経営する居酒屋に阪神ファンを集客すると会議で決まったとします。
しかし、前述の通り、阪神ファンにも色々な人がいます。

そして、先ほどの阪神ファンの層を違った切り口で分けると以下のようになります。

A. 阪神だけが好きな阪神ファン
B. プロ野球全般が好きな阪神ファン
C. スポーツ全般が好きな阪神ファン

といった層に分かれます。
毎試合甲子園で観戦するファンの中にはAのような人の割合が比較的多いと想像できます。
また居酒屋やスポーツバーなどで観戦するような人はBやCのような人が比較的多いのではないでしょうか?

ではそれぞれの層を集客するにはどういう対応が必要になるか考えてみましょう。

A. 阪神だけが好きな阪神ファンを集客するには?

この層には非常に熱狂的でコアなファンが多いと想定できます。
多くの人がオレンジ色(巨人を連想させるもの)に拒絶反応を示し、オレンジ色のものを着用してお店に行くと「あいつは巨人の回し者や!」などと言われかねません(笑)
また今開催中のWBCも阪神の選手が出ていないと興味を示さない人が多いです。
とにかく阪神中心に生活している人たちなのです(笑)

そして、このような熱狂的なファン層を集客するためにはあなたのお店をいわゆる「阪神居酒屋」にする必要があります。
阪神居酒屋にするには以下のような対応が必要です。

・有料放送などを契約し、店内で阪神戦を観戦できる環境を整える。
・店内を阪神グッズやユニフォームなどで装飾する。
・応援グッズを用意する。
・阪神の選手名がついた料理などを開発する。
・阪神居酒屋をイメージできる外観に改修する。

このように、コアな阪神ファンを集客するには、結構な費用と手間がかかります。
そして阪神居酒屋化することで他球団のファンや、一般的なお客さんからするとお店に入るハードルはあがります。

しかし費用と手間がかかる分、競合は少なくなり、コアなファン層をつかむことができれば、阪神ファンの聖地としてファンが集うお店になる可能性も出てきます。

B. プロ野球全般が好きな阪神ファンを集客するには?

この層は阪神が好きだけど他球団の試合だったり、高校野球、メジャーリーグなど野球全般が好きな層です。
今開催中のWBCであれば、阪神の選手が出ていなくても純粋に応援できます。

この層の人たちを集客するには阪神居酒屋にする必要はありませんが、ある程度は野球に特化した方が集客はしやすくなります。

具体的には
・有料放送などを契約し、店内で阪神戦をはじめ、野球の試合を観戦できる環境を整える。
・店内を各球団のユニフォームやグッズなどで装飾する。
・店外の看板やSNSで本日放送する予定の試合を告知する。
・球団名がついた料理や野球を連想させるメニューなどを開発する。
などの対応が必要となります。

もちろんここまでしなくても野球全般が好きな阪神ファンは来る可能性はありますが、より特化した方が野球好きが集まる可能性は高くなるでしょう。

一方、阪神に特化していないことで、Aのような超コアな阪神ファンの中には支持されないこともあるでしょう。

C. スポーツ全般が好きな阪神ファンを集客するには?

私はこのCに該当します。
私は阪神ファンですが、野球全般が好きなので他球団の試合でも楽しく観戦できます。
(もちろん阪神の試合の方が熱が入るのですが・・・笑)

またスポーツ全般好きなのでサッカーやラグビー、ボクシングなどメジャーなスポーツからマイナースポーツまで、どんなスポーツでも楽しんで観戦することができます。

私のような阪神ファンをあなたのお店に集客するためにはこんな対応が必要です。

・有料放送などを契約し、店内で阪神戦をはじめ、スポーツを観戦できる環境を整える。
・店外の看板やSNSで本日放送予定の内容を告知する。

SNSなどを経由してお店の情報が私まで伝われば、「あそこはスポーツ観戦ができるお店」とインプットされます。
オリンピックやサッカーの日本代表戦、WBCなど大きなスポーツイベントがある日に友人との飲み会があれば、「あのお店なら放送しているかも?」と考え、お店に足をのばすかも知れません。

Aの阪神だけが好きな阪神ファンやBのプロ野球全般が好きな阪神ファンを集客するための対応よりも手軽ですが、他店との差別化は難しくなります。

また日によっては違うスポーツを放送することもあるので、入ってきて「あれ? 野球の試合がやってないの?」いうことにならないよう、しっかりと店外の看板やSNSを通じて放送内容を告知する必要があります。

同じ阪神ファンであってもどのような層の阪神ファンをターゲットとするかによって、お店が実施するべき対応は全然違ってくるのがおわかりいただけたかと思います。

では次は今までの阪神ファンの話をムスリムに当てはめてみましょう。

ムスリムでもいろいろな解釈の人がいる

まずはムスリムの生活習慣をご覧ください。


細かい決まりはまだまだたくさんありますが、これがムスリムの基本的な決まりとなります。
しかし、これらの決まりも人によって解釈が変わるのです。

私がいたマレーシアは東南アジアの中では比較的厳格なムスリムが多い国でした。
ムスリムの女性はみんなヒジャブで髪の毛を覆っており、マレーシア人と食事する際は、マレーシア料理やハラル認証を取得しているお店を選ぶというのが常識でした。

しかし、出張で訪れたインドネシアのジャカルタでは、ヒジャブを着用している女性が非常に少なく、それまで「ムスリムの女性は絶対にヒジャブを着用しないといけない」と思い込んでいた私にとって驚きでした。

また食事をする際にも、ムスリムなのにアルコールを飲む人もいたりして、衝撃を受けたのを覚えています。

おそらく私が遭遇したお酒を飲むインドネシア人はレアケースだと思います。
インドネシアにも厳格なムスリムはたくさんいます。

しかし、その後に日本でもお酒を飲むムスリムに遭遇したり、礼拝の回数を省略している人にも出会いました。

また、イスラム教の教えの中で旅行中は礼拝や断食が免除されることを拡大解釈して、ラマダーン時期にあえて旅行に出かけて断食を回避する人もいるらしいです。

つまり、イスラム教の解釈は人それぞれで、さまざまなスタイルのムスリムがいるのです。

個人によって解釈が変わり、同じ個人でもその人が居る場所によって解釈が変わることもあるのです。
だからヒジャブを被っている人もいれば、何も被っていない人もいます。

これは阪神ファンと同様にそれぞれ個人の解釈(スタイル)の問題でどれが正解というものではないのです。

飲食店のムスリム対応もターゲットによって変わる

飲食店がムスリムを集客する場合は、阪神ファンを集客するのと同じようにムスリムの中でもどの層をターゲットにするのかによって、必要となる対応も変わります。

以下の表はムスリムの解釈の仕方を大雑把にわけたものです。

自国にいる時と旅行中で解釈を変える方もいらっしゃいます。
これはイスラムの教えで旅行中は礼拝の回数を減らしたり、簡略化しても良いとされているからです。

しかし、これも個人の解釈の仕方によって変わります。

例えばAさんのような厳格なムスリム層は自国でも旅行中でも変わらず厳格です。
旅行中であってもしっかりと礼拝をします。

食べ物についても、イスラム教の戒律に則って調理されたものしか食べません。

上の表でいうと飲食において

Aさんの層はどんな時でもハラルフード(イスラム教の戒律に沿った食べ物)しか絶対に口にしないという人。
Bさんの層は普段はハラルフードしか口にしないが、旅行中ならそこまで神経質にならない人。
Cさんの層は普段からそこまで神経質ではない人。
という感じです。

それではそれぞれの層を集客する際に実施するべき対応をまとめてみましょう。

「厳格なムスリムであるAさん」を集客する場合

飲食店がAさんのような方を受け入れるにはハラル認証を取得する必要があります。

ハラル認証とはイスラム教の戒律に則って調理された料理を提供しているお店であることを証明するもので、取得するには認証機関による厳しい審査を受けて、定められた基準をクリアする必要があります。
ムスリムを受け入れるには取得しておいた方が良いのは間違いないのですが、実際に取得するまでのハードルは高いです。

これを前述の阪神ファンを集客する対応でいうと、コアな阪神ファン向けにお店の内装や外観を変更するということに似ています。

取得には時間も費用もかかりますが、日本ではまだ取得しているお店が少ないため、取得することで多くのムスリムを集客できる可能性があります。

「旅行中はそこまで厳格ではないBさん」や「普段から厳格ではないCさん」を集客する場合

阪神ファンの場合と同様に、すべてのムスリムの人がハラル認証を必須にしているかというとそうではないのです。

あくまで例ですが、以下のような対応をすることで問題のないムスリムの方もいらっしゃいます。

・豚肉のみ抜いた料理を提供する。
・豚肉とアルコールを抜いた料理を提供する。
・ハラルフードを手配して、調理して提供する。※調理方法はハラルに則ってなくてもOK。

ムスリムに対応するためにはハラル認証を取得しないといけないと思い込んでられる方にたまにお会いすることがありますが、実はハラル認証を取得していなくても上記のような対応で問題のない方も多くいらっしゃいます。

ではムスリムをターゲットにして受け入れていくには何が大事になるでしょうか?

大切なのは情報の開示


飲食店に阪神ファンを集客する上でもムスリムを受け入れるレストランでも、大切なのは情報の開示です。

阪神ファンを集客する場合だと例えば

・当店のTVでは阪神戦以外を放送することもあります。
・他のスポーツを流す日もあります。
・お店の内装はこんな感じのお店です。

などの情報を予め開示しておくことで
「それでも良いよ!」という阪神ファンが来店し、「絶対に阪神戦が観れる」と誤解して来店するような人はいなくなるでしょう

ムスリムでも同じです。

・ハラル認証は取ってません
・豚肉料理やアルコールを提供しているお店です
・豚肉、アルコール抜きの料理に対応できます
・ムスリムの料理人はいません
・ハラル専用の調理場はありません
・ムスリム専用の礼拝場所を提供することができます

など細かい情報をあらかじめ提供することで、ムスリムがそのお店を選ぶかどうかを判断することができるのです。

細かい情報を事前に知ることができたおかげで「ムスリムだけど旅行中なのでハラル認証がないお店でもOKだよ」という前述のBさんやCさんの層が来店するかも知れません。
また、あらかじめ情報がわかることでAさんのような厳格なムスリムの方が間違えて来店してしまうということもなくなり、トラブルが起こる可能性が下がります。

つまり、ムスリム対応ができていないことが問題ではなく、あなたのお店がどういう環境でどこまで対応できるお店なのかが事前にわからないということが一番の問題なのです。

まずはお店の環境や、できる対応などを整理してみましょう!

まとめ

いかがでしたでしょうか?
私の周りではムスリムの対応がいまいちよくわからないという方が多く、日頃から「わかりやすく説明する方法はないないかな?」と考えていました。
そして今回はそんな人に向けてムスリム対応を阪神ファンに例えるということにチャンレンジしました。
多少強引な部分もあったかもわかりませんが、あなたの理解を少しでも深めることができたら嬉しいです。

今回お伝えしたかったのは阪神ファンもムスリムも本当に色々な考え方の人がいるということです。
そしてその人たちに対して事前にできることとできないことの情報を開示してあげることはとても重要なことなのです。

今後もさらにムスリムの旅行者は増えていくので、あなたのお店でもまずは情報の開示から始めてみませんか?
それをすることでムスリムがもっと安全にもっと楽しく日本を旅行できるようになります。
そしてそれは日本のファンを増やすことにも繋がるのです。

ぜひ取り組んでみてください!

また、ムスリムの対応については以下の記事も参考になると思いますのでぜひお読みください。

少しの工夫で対応できる!? 飲食店のムスリム(イスラム教徒)集客と接客の3つのポイント
こんにちは。イロドリの今津です。突然ですがあなたはムスリム(イスラム教徒)についてどんなイメージをお持ちでしょうか?「豚肉やアルコールが禁止」「断食」「女性はヒジャブ(頭に布)を被っている」「1日5回メッカの方角を向いてお祈りしている」などムスリムと言えば厳しい戒律を守らなければいけないというイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。そしてその厳しいイメージからムスリムの対応をするのは大変なことだと思っていませんか?確かに戒律の厳しい人の基準に合わせると、ハラル専用のキッチンの用意、ハラ...

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