こんにちは。
イロドリの今津です。
2015年に流行語大賞を獲得した「爆買い」ですが、2016年に入ってからは多くのメディアで「爆買いが終了した」「中国人の消費は落ち込んでいる」というニュースを耳にする機会が増えました。
しかし今でも街で買い物袋をたくさん持った中国人の姿をよく見かけますよね。
そのような光景を見ているとメディアで報道されているように本当に中国人観光客の消費が落ち込んでいるのか疑問に思うことはありませんか?
そこで今回は中国人観光客の消費に関するデータを詳しく見ていき、中国人の消費の実態について調べてみたいと思います。
なぜ「爆買いが終わった」とメディアは報道するのか?
ではなぜ多くのメディアで「爆買いが終了した」「インバウンド消費は終焉を迎えた」などの報道がされているのでしょうか?
その理由の多くは「中国経済が低迷しているから」というものです。
実際に昨年の春頃から百貨店や家電量販店の売上が大きく落ちたことが報道されました。
また、2015年には約16万円だった中国人1人あたりの買い物消費額も2016年上半期には約12万4000円まで落ち込んだことも同時に報道されました。
それを見た多くの人が「本当に爆買いは終わったのか。メディアの言うように中国経済はもうダメなんだろうなぁ」と思うのも無理はありません。
さらにそれを裏付けるように中国政府は2015年10月より銀聯カードの年間引き出し額を10万元(約160万円)までと制限しました。
以前より1日の引き出し額が1万元(約16万円)までと制限されていたこともかさなり、富裕層や転売目的で購入していた人たちに大きな影響があったようです。
そしてさらに中国政府は2016年4月から関税の税率を最大60%へと引き上げました。
税率は酒や化粧品が50%→60%、高級時計が30%→60%、衣類・自転車・ビデオカメラなどが20%→30%、カメラ・食品・飲料水・玩具などが10%→15%へと引き上げられたのです。
また、海外から2000元(約3万3000円)を超える商品を買ったり、年間2万元(約33万円)を超えた場合は個人消費と認めず、通常の貿易と同じ関税をかけるという規則に変えるなど、日本を含む海外で中国人観光客がお金を使えない(もしくは使う気をなくさせる)政策を打ち出しました。
要するに「海外でお金を使わずに、ちゃんと中国国内でお金を使ってね」ということです。
この影響で電化製品やブランド品などの高額品を日本で買うメリットがなくなってしまったことで、さらに百貨店や家電量販店は厳しい状況に立たされています。
さて、ここまでの流れを見るとまさに「中国経済が失速した影響で中国人観光客の消費意欲は落ち込み、日本での爆買いも終了し、中国人の使えるお金はよほど減っているのだろうな」と思ってしまいがちです。
しかし、この説明には1つの落とし穴があります。
それは一体何なのでしょうか?
円と元では消費額がまったく違う!?
それは、消費額の変動には為替の影響が大きく左右するにも関わらず、多くのメディアでは日本円をベースとした消費額だけを見ているということです。
消費額を見ていく際に本当に必要なことは日本円だけでなく中国の現地通貨を基準にして見ることではないでしょうか。
例えば、あなたがハワイ旅行をするときに「今回の買い物は◯ドルまで使おう!」と予算を建てますか?
少なくとも私は「今回は10万円まで」という風にドルではなく日本円で予算を決めます。
おそらくほとんどの人がそうしているのではないでしょうか。
同じように日本を訪れる中国人観光客も中国人民元で予算を考えているはずです。
だからこそ中国人観光客の本当の消費の変化をつかむためには円ではなく、中国人民元を基準にして見ていくことが必要なのです。
消費意欲は衰えていない!?
まずは2015年から2016年にかけての中国人1人あたりの買い物消費額(中国人民元)の四半期ごとの推移を見てみましょう。
※観光庁が発表している訪日外国人消費動向調査の観光・レジャー目的のデータをもとに中国人民元に換算したデータとなります。
まずは2015年と2016年のグラフを比較してみました。
すると1-3月と10-12月(赤丸で囲った四半期)は2016年が2015年の消費額を上回っていたのです。
「爆買いが終わった」という報道が頻発し始めたのが2016年4月に税関での取締が強化された頃です。
そして昨年末には「爆買いにはもう期待できない」という意見が一般化された感があったのにも関わらず、2016年10-12月の消費額は2015年10-12月を上回っていたのです。
これには私自身も驚きました。
さらに日本円と中国人民元の2015年との同期比を比較してみると一目瞭然です。
※昨年同期比でマイナスになった数字を赤色で表記しています。
特に4月~6月が-20.44%、7月~9月が-24.37%と-20%台と大きく減少した時期でした。
しかし、中国人民元で見ると4月~6月が-4.73%、7月~9月が-3.86%と減少幅は数%となっており、日本円と中国人民元で見た数値には多きな差があることが分かりました。
このデータからも分かるように、以前のような「爆買い」と言われていた消費行動が落ち着きを見せていることも事実です。
かつては私たち日本人も海外旅行に行き、ブランド品や時計などを爆買いしていた時代もありました。
しかし、今ではそんな人も一部の人たちだけになりました。
同じように中国人の消費行動も変わってきています。
では消費行動はどのように変わってきているのでしょうか?
消費行動にはどんな変化が起きているのか!?
今まで中国人が「爆買い」していた商品と言えば、ブランド物の鞄や時計、炊飯器や便座などの電化製品を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。
しかしニュースでも言われているように高額品が売れなくなったという事実もあります。
ではそれらの商品を「爆買い」をしていた中国人たちの購入する商品が変わっているのでしょうか?
高額商品から日用品へ
実際に中国人の買い物の中身を分析してみたいと思います。
以下の項目は観光庁が発表している買い物代の内訳となります。
〈買い物代の内訳〉
●菓子類
●その他食料品・飲料・酒・たばこ
●カメラ・ビデオカメラ・時計
●電気製品
●化粧品・香水
●医薬品・健康グッズ・トイレタリー
●和服(着物)・民芸品
●服(和服以外)・かばん・靴
●マンガ・アニメ・キャラクター関連商品
●書籍・絵葉書・CD・DVD
●その他買物代
※その他買い物代は購入したジャンルが不明確なためデータからは除いています。
まずは元に換算した販売額の商品ジャンルごとの2015年のシェアの推移を見ていきます。
次に2016年の推移を見ていきます。
まずはシェアが減少した商品ジャンルを見てみると「カメラ・ビデオカメラ・時計」「服(和服以外)・かばん・靴」「電気製品」「和服・民芸品」の4項目です。
なかでも、もっとも変動が大きかったのが「カメラ・ビデオカメラ・時計」と「服(和服以外)・かばん・靴」です。
カメラ・ビデオカメラ・時計:23.6%(2015年)→21.6%(2016年)
服(和服以外)・かばん・靴:18.8%(2015年)→16.8%(2016年)
と同率で2.0%の減少となりました。
また、シェアを伸ばしたジャンルを見ていくと「化粧品、香水」「医薬品・健康グッズ・トイレタリー」「その他食料品・飲料・酒・たばこ」の3項目でした。
その中でもっとも伸びたのが「化粧品、香水」で12.9%(2015年)→16.2%(2016年)と3.3%も伸びています。
この結果から2015年から2016年にかけて高額品から日用品へと購入する商品が変わってきていることが分かります。
税制の変更や税関での取締の強化を受け、中国人の消費傾向が変わったのです。
今もっともアツいのは飲食とコト消費!?
さきほど中国人が購入してる物の中身に変化はあるものの、買い物消費額は大きく変わっていないことをお伝えしました。
そこで次に、買い物以外の宿泊代、飲食費、交通費、娯楽サービス費の消費額の推移を元ベースで見ていきたいと思います。
グラフを見ると2016年春(爆買い終了報道)以降も宿泊、飲食・交通・娯楽費が多少の変動はあるものの昨年と比べて伸びていることが分かります。
ただ、この結果には円高による影響が大きく関わっています。
2015年7月は1人民元=約20円だった為替レートは2016年7月には1人民元=約15.5円と円高元安でした。
例えば去年は約500元(1万円)で泊まれたホテルが約645元(1万円)になり、同じホテルに泊まる場合は去年よりも多くの人民元を支払わないといけないということです。
そのため旅行をする上での必要経費が増えることから当然のことだとも言えます。
しかし、項目ごとの伸率を見てみると面白いことが分かります。
2016年4-6月と10-12月を比較してみると、なんと飲食費と娯楽サービス費が20%以上の伸率になっていることが分かります。
円高の影響を受けて、日本での消費が割高になることを考えると、個人の裁量で自由にコントロールのできる飲食費と娯楽サービス費に割く費用が下がってしまいそうなものです。
それにもかかわらず、飲食費と娯楽サービス費が20%以上も大きく伸びているということは、食事や体験を重要視する中国人が増えていることを裏付けるデータと言えるかもしれません。
かつては日本でしか買えなかった商品が中国で買える!?
また、中国人の消費行動に大きな影響を与えている要因として考えられるのが越境ECの台頭です。
例えばかつては日本でしか買えなかった商品が、中国国内で売られはじめていること。
そして日本の販売価格よりも2~3倍していた商品が日本よりも少しだけ高い値段で購入できるようになったことで、わざわざ日本に来て商品を購入する理由が減ってきているのです。
また、それを裏付けるデータとして日本から中国への越境ECの市場規模は2015年に7956億円(対前年比31.2%増)、2016年に1兆円を超え、2019年には2.3兆円に達する見通しであると経済産業書からも発表されています。(平成27年度電子商取引に関する市場調査より)
今後は日本国内での消費と越境ECの台頭が消費行動に大きな影響を与えるため、しっかりと注視していくことが必要になります。
変化に対応し続けること
それではたった2年あまりで消費行動に大きな変化のある中国人をターゲットにしたビジネスを成功させるためにはどういった視点を持つことが求められるでしょうか?
一番大切なのは中国人の消費動向の変化やトレンド情報を把握するために常にアンテナを張るということです。
そしてそこで得た情報を元に戦略を立て、できるだけ早く実行し、結果を検証する。
要はPDCAサイクルをできるだけ早く回すことです。
そしてこのPDCAサイクルは中国人に限らず、誰をターゲットにしていても役立つ仕組みです。
そこで得た知恵や経験を社内で共有し、さらに新しいチャレンジを続けていけばどんな変化にも対応できる強い組織作りに繋がるはずです。
そういう視点でインバウンドビジネスに取り組んでみると、また今までとはまったく違った結果が得られるかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回、中国人の消費額を中国人民元ベースに換算して調べた結果、買い物消費額は以前と比べてもそこまで大きく変わっていないということが分かりました。
しかし、買い物の内訳が高額品から日用品に変わったり、高額商品の大量買いが落ち着きを見せていることも事実です。
「爆買い終了=中国人の消費が落ち込んでいる」というような報道もありますが、私はそこまで悲観的になる必要はないのではないかと思います。
実際、2016年の独身の日(11月11日)に行ったアリババグループ(中国最大のネット通販最大手)のセールでは24時間で1207億元(約1兆8600億円)の取引額に達したとの報道がありました。
これは日本Amazonの2015年の年間取引額である約1兆6000億円をわずか24時間で上回ったことになります。
このことからも中国人の消費意欲はまったく落ちていないということが分かります。
もちろん関税の変更や銀聯カードの制限などにより今後も影響を受けることもあるかもしれませんが、現段階において言えば日本においても中国人の買い物や旅行消費を獲得するチャンスがまだまだあるということです。
そしてインバウンドという視点で見た時に中国はとてつもなく大きなポテンシャルを秘めています。
中国には約13億人の人々が住んでいますが、まだ、ほんの一握りしか日本に訪れたことがありません。
また、彼らの所得も昔と比べると増えてきています。
つまりそれは日本へ訪れる機会を得る中国人がさらに増えるということを意味します。
今後も日本を訪れる中国人をターゲットにビジネスに取り組むには、
・最新の情報にアンテナを張り、中国人旅行者のトレンドに注視しておくこと
・そこで得た情報をもとにしっかりと戦略を立て、PDCAを繰り返すこと
が重要です。
そうすることで、成功への道が見えてくるはずです。
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