「留学生の何気ない一言によって気付かされた」 – 株式会社NICO 井手 隆一郎さんインタビュー(前編)

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イロドリの小林(@hidekobayan)です。

訪日外国人集客には勝利の方程式というものが存在しません。

誰もが試行錯誤しながら効果的な方法を模索しているというのが現状です。

そこで必要なのが「経験者の言葉」です。

このたびイロドリではインバウンドビジネスで実績を築いている方々へのインタビュー企画をスタートしました。

記念すべき第一弾は株式会社NICOの株式会社NICOさんです。

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井手 隆一郎 CEO

1974年生まれ

個人旅行の外国人観光客向けに旅行コンシェルジュサービス「ニコジャパンツアー」を提供。

インバウンドマーケティングのトップセールスマンとして自身も現場で活躍し続けている。

井手さんがインバウンドビジネスをスタートしたキッカケ、突如襲われた災難、それを乗り越えるまでの苦難から得た経験を元に、今後インバウンドビジネスに力を入れようとする方へのアドバイスなどを前後編に分けてお送りしたいと思います。

日本の良さを知らないんだなということに留学生の何気ない一言によって気付かされた

ー 本日はよろしくお願いします。まず最初に井手さんが外国人の方と関わられることとなったキッカケを教えてください。

もともと私は大手の人材紹介会社で働いていました。

当時は珍しかったんですが、そこで私は「留学生の就業支援」を10年間ほどさせていただいておりまして、それが最初に外国人の方と関わることとなったキッカケです。

ー そこでは主にどんな大学を担当されていたんですか?

最初は大阪、京都、兵庫という都市部の大学の留学生の就業支援で各大学に赴いていたのですが、徐々に地方大学から「当校の留学生を何とかしてもらえないか」という依頼が増えて来るようになりました。

そして初めて地方の大学へ行ってみると、大学によっては留学生比率が全体の50%を超えていることもあり、まさに「留学生無しでは成り立たない」という状況に大変驚きました。

ここで外国人が日本の経済にもたらす影響というものを実感しましたね。

それと同時に今後少子高齢化が進む日本においてこの現象は地方だけでなく全国に広がって行くだろうなと思いました。

ー なるほど。それがインバウンドビジネスを起ち上げようと思ったキッカケなんでしょうか?

まずは「留学生の就業支援」という部署で10年間担当させてもらえたのが大きいですね。

ただ、一番大きな理由は実はたった一人のある留学生の一言だったんです。

それは京都の大学の留学生だったんですが、彼から「井手さん、京都で世界遺産にはどれくらい行きました?」と聞かれたんですね。

私は日本人で関西に生まれ育ったので、彼からすると「京都には当然詳しいだろう」と思っている訳です。

ところがこれが言えないんですよ。

「金閣寺かな?清水寺かな?…あと何でしたっけ?」となってしまった訳です。

すると彼は驚いた表情で「え?僕はここもあそこもこんな所も行きましたよ。」と全部言うんですよ。

でも日本人の私は全然知らない。

これは私にとって非常にショックな出来事でしたね。

ー そう言われると私もちゃんと答えらません…。

でしょ?

日本人が日本に住んでいるのに日本の良さを知らないんだなということに留学生の何気ない一言によって気付かされたんです。

それが僕が「日本の良さを海外の人にちゃんと伝えられるような仕事をしたい」と思ったキッカケです。

そして留学生の話を聞いて行く内に「日本の観光地や季節、食べ物や文化というのは海外の方々にウケるんじゃないか。」という事に気付きました。

それが8年ほど前の出来事です。

「日本は個人旅行者に対して優しい国じゃないな」と思いました

ー そこからすぐに起業されたんですか?

いえ、もちろん就業支援の仕事もありましたし、起業までの準備期間を作りました。

そして準備も整い、訪日観光客数も右肩上がりに増えて来て、「これから起業するぞ!」というタイミングで起きたのが東日本大震災だったんです。

ー えっ!という事はいきなり苦境からのスタートだったんですね…。

そうなんです。

ただ、先ほど申し上げたように僕の中で「日本の魅力」というものに確信を持っていたので「やってやるぞ!」という気持ちが切れることはありませんでしたね。

ー その状況の中でどんなサービスをスタートされたんですか?

自分の中で「外国人の方々に何が提供できるか」を考えていたんですが、旅行なので目に見えて形に残る物が良いなと思っていたんです。

そこで外国人観光客の方々を見ていると皆さん記念撮影をされていたので、「彼らの想い出に残るような写真を撮ってあげることなら自分にも出来るんじゃないか」と思ったんです。

そこで写真撮影サービスをスタートしました。

ー なるほど。そのサービスはどうだったんでしょう?

ありがたいことに皆様とても喜んでいただくことができました。

そして今でも多くの方にこのサービスを提供しております。

ー 以前テレビで取り上げられていた際もタイ人女性が着物を着て嬉しそうに写真撮影されてましたよね。

はい、そうなんです。

ただ、弊社のお客様はほとんどが個人旅行者の方なんですが、話を聞いていると海外にはよくある個人旅行者向けの旅行サポートサービスというものが日本には無いということを知ったんです。

具体的には現地での宿泊数や食べたい物、行きたい場所などのリクエストを投げると、それに対してプランをコーディネートをして提案してくれるんですね。

そしてホテルやレストランの予約までしてくれる。

現地に行くまでの手段は自分で手配しなければいけないですが、それ以外はすべて準備してくれるという物です。

これを知った時に「日本は個人旅行者に対して優しい国じゃないな」と思いました。

なのでこれをサービスにしようと思ったんです。

ー なぜ日本ではそういったサービスが少なかったんでしょうか?

これは私の個人的な考えですが、日本人は「決められたことをしたり、決められた中で楽しむ」という事にとても長けた民族ですよね。

それとは逆に自分で目的を決めてプランニングをして手配をするというスタイルには慣れていなかったので、そういったサービスが少なかったのではと思っています。

ー なるほど。確かにそれはあるかもしれませんね。

はい。

外国人の方は逆に「自分の意志で決めたい」という方が多いんですが、インターネットでひとつずつ調べなくてはいけません。

そこでワンストップでコーディネートできるサービスは面白いんじゃないかなと思ったんです。

それが約4年前のことです。

反日デモが起こった日に僕は上海にいた

ー 新しいサービスだったので苦労も多かったのでは?

苦労はめちゃめちゃしました(笑)

私たちは最初「中国人向けのサービス」としてスタートしたんですね。

理由はとてもシンプルで就業支援をしたことで中国人ネットワークが強かったからです。

そして中国人留学生にも手伝ってもらいながら、中国の蘇州という場所でパートナー企業を見つけビジネスをスタートし、少しずつ注文も入り出しました。

しかし、その時(2012年)に尖閣諸島抗議デモの問題が起こったんです。

ー え!起業時の震災に続いて今度は尖閣諸島問題ですか?

そうなんです。

その影響でせっかく取れた注文はすべてキャンセルになってしまいました。

そしてそれ以上に恐ろしかったのは反日デモが起こったその日、僕は上海にいたんです(笑)

ー なんと!あの時に現地におられたんですか!?

はい。

その時はとにかく移動が大変でして、同行してくれていた中国人スタッフから「井手さん、とにかく外では絶対に喋らないでください。」と何度も念を押されました。

そしてホテルも私の名前で取っていたんですが、すべてキャンセルされてしまったんです。

これはホテル側が私に対して差別的な対応をしたということではなく、「このホテルには日本人が泊まっている」ということが知られてしまうとホテルがデモ隊に襲われてしまってすべてのお客様に迷惑が掛かってしまうからというものでした。

それは致し方ないなと思いましたね。

ー なるほど。それにしても想像を絶する体験ですね。

そうですね。

それまで日本で生まれ育って「民族紛争」という物に巻き込まれたことはありませんでしたから。

ー やっぱり日本に帰って来られた時はホッとしましたか?

いや〜、さすがにホッとしましたね。

現地で飛行機に乗って離陸するまではドキドキしていました。

日本に対するイメージを決めるのはその時にその人と接した日本人

ー 1年目に震災、2年目に尖閣諸島問題という大きな壁にぶつかられて、それでも続けようと思えたのはなぜなんでしょうか?

それはある中国人観光客の方の一言なんです。

その方は日本人に対して特段良くも悪くも思っていない人だったんですが、日本が過去にしたことに対して問題意識は持たれている方でした。

その中で私たちもいろいろお話させていただいたんですが、最後にその方が「ありがとう。日本に来て良かった。」と仰ってくれたんですね。

ー それは心に残りますね。

そうですね。

ただ、それ以上に私が感じたのは「他国と政治的に険悪なムードになったとしても、その人の日本に対するイメージを決めるのはその時にその人と接した日本人なんだな。」ということです。

なので、観光商品やサービスの企画開発や日本を生かすコンテンツの運営だけでなく、その人にとっての「日本の想い出」を創っていくことが私たちの仕事だなと考えるようになりました。

例えば外国人の方と話していると日本人は全然知らないような日本人の名前が出て来ることがあるんです。

彼らはその日本人の影響で日本に対して良いイメージを持っていてくれたりする。

「じゃあ、私たちもそんな心に残るサービスを提供しよう」という気持ちは常に持ち続けています。

ー 尖閣諸島問題が起こってからビジネス面はどうされたのでしょうか?

尖閣諸島問題の影響をモロに受け、注文がすべてキャンセルになったり、中国人スタッフが親に呼び戻されて帰国してしまったこともありました。

一度ストップしてしまったビジネスを再稼働させるのは多大な労力が必要になります。

また、民族リスクは自分の力ではどうすることも出来ません。

そこでターゲットを民族リスクが少なく比較的親日的な国に変えようと思いました。

それが台湾、香港、そしてタイです。

これらの国は親日国であるということもありますが、宗教的にも仏教国であるというのも大きな理由です。

日本の文化や習慣とマッチしやすいので、サービス提供しやすいだろうと考えたからです。

ー そしてその選択は正解だったと?

どうでしょう。

先のことはまだ分かりませんが、今のところ順調には来ているかなと思います。

「安心・安全」という環境に魅力を感じてくれている

ー 井手さんから見た「日本が外国人の方からウケているポイント」ってどんな所でしょうか?

よくメディアでは「おもてなし」だとか「日本人の国民性」がウケているといったことが報道されているのを見るんですが、私の経験上では「そこまで日本人を理解した上で日本に来られている人は少ない」と思っています。

それよりも「メイド・イン・ジャパンの商品は安心できるんだよ」や「日本の食べ物は美味しいんだよね」といった印象の方が強いと思いますね。

ー なるほど…。日本の信用力がウケていると。

そうなんです。

例えばブランド品では「日本では絶対偽物は売ってない」という信用がありますし、食べ物についてもそうです。

海外では栄養管理や安全管理がされていない食べ物が出て来る場所がたくさんありますが、日本でそういった店ってほとんどないですよね。

食中毒が出ればもちろん営業停止になりますし、食品の安全管理についても他国と比較すると厳しくチェックされています。

その「安心・安全」という環境に外国人の方々が魅力を感じてくれているんだなと感じますね。

まとめ

インタビュー前編はいかがでしたでしょうか?
今回のインタビューで感じたのは井手さんのビジネスに対してだけでなく人間としての信念の強さです。
その信念の強さが常人では乗り越えられないような壁を乗り越えた力の源なのだと想います。
井手さんの想いがスタッフの方にも伝わり、外国人観光客に対しても伝わっていることがよく分かるお話を伺うことができました。
後編ではインバウンドビジネスをする上でのアドバイスや井手さんの今後の展望などをお届けします。

<後編>に続く。

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