「ホームページもないのに外国人のお客さんが次々とお店に来てくれるんです」 – 月のおどり 徳永さん、Michiさんインタビュー <前編>

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イロドリの小林です。

今回はご好評のインタビュー企画の第二弾です。

今回ご紹介するお店は…

弊社が訪日外国人観光客向けメディアBATTERAを立ち上げて間もない頃のことです。
サイト訪問者の人気の検索キーワードを眺めていると「Osaka restaurant」や「Shinsaibashi food」などのベタなキーワードの中に1つの変わったキーワードがあるのを発見しました。

そのキーワードは「tsuki no odori」です。
つまり今回インタビューするお店の「月のおどり」さんです。

海外から定期的に店名が検索されるというのは珍しかったので改めてお店の情報を見てみました。

ジャンルは「焼鳥」です。
外国人に人気が高いお寿司やラーメン、お好み焼きではありません。
では場所は?
確かに道頓堀という好立地ですが、「かに道楽」や「づぼらや」といったお店が並ぶ観光客が必ず通る一等地ではなく、堺筋寄りのいわゆる「わざわざ行かなければいけない場所」です。
それでもこのキーワードは今でもBATTERAの人気キーワードの1つなのです。
※BATTERAでの記事はこちら

人気の理由が気になった私はお店に電話をし、お話を伺ってみました。
すると外国人観光客が連日のように訪れる人気店であることが分かったのです。
しかもお店のホームページすら無いのに…。

とても興味深いので更にお話を聞いてみると、

・オーナーはかつて世界的に有名なプロのダンサーだった
・「月のおどり」の「おどり」は「踊り」や「雄鶏」の意味を持っている
・スタッフのMichiさんは世界中に友達がいる

など、さらに興味を引くお話をたくさん伺うことができました。

「月のおどり」はどのようにして「外国人観光客がわざわざ足を運ぶほどのお店」になることができたのでしょうか?

外国人観光客の集客事例はまだまだ多いとは言えません。
そこで今回は数少ない成功事例である「月のおどり」の店長兼社長の徳永さんと広報・インバウンド担当のMichiさんのインタビューをお届けいたします。

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徳永 髙弘 店長兼社長

祖父が80年前に熊本で営んでいた焼鳥屋を大阪でオープン。
日本人だけでなく世界の人々に喜んでもらえる焼鳥屋になるべく日々研鑽を重ねている。

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Michi 広報・インバウンド担当

「日本に住みながら世界旅行ができそう」というほど多くの国籍の友達を持つ彼女。
WEBを使ったPR活動や外国人向けのメニュー作りなど、「月のおどり」のおもてなしレベルは彼女によって高められている。

飲食業界の方はもちろん、インバウンドビジネスをされる方にとっては必見の内容となっておりますのでぜひご一読ください。

ホームページもないのに外国人のお客さんが次々と来てくれるんでビックリしましたね

小林:お店をオープンされた頃の話を教えていただけますか?

徳永: 4年ほど前ですね。それまでは弁天町でやってまして、店を増やしたくてここに新規出店したんです。でも最初は大変でしたよ。食べログとかぐるなびとかホットペッパーとか全部やってみたんですけどなかなかお客さんが来ないんです。

小林:そうなんですか。

徳永:道頓堀は観光地なんで弁天町と違って近所に住んでいる人が来るっていう場所じゃないんですよね。だから今でこそ常連さんも増えましたが最初はとにかく細々とやってました。でも「このままだとダメだなぁ」と思ってた時に彼女(Michiさん)がウチに働きに来てくれたんですよ。

Michi:そう、最初は3ヶ月だけ働く予定だったんですよ。でも気付けばもう2年くらい居座ってますね(笑)

小林:「居座ってる」っていう表現は正しいんですか?(笑)

徳永:まぁ、正しいかな(笑)

小林、Michi:(笑)

小林:外国人観光客へのアプローチは最初から考えられてたんですか?

徳永:そうですね。でも方法が分からなかったんで。

小林:そこでMichiさんが活躍されたと。

徳永:はい、そうですね。

Michi:最初は外国人向けのちゃんとしたメニューも無かったんですよ。ネットの管理も誰もしてなかったし。

徳永:そう、ちょっとした一枚のメニューしか無かったんです。

Michi:私はもともと外国人の友達が多いんで友達が店に来てくれるようになったんです。そしたら「さすがにちゃんとしたメニューいるよね」って話になったので作ったのがキッカケですね。でもどうやって作って良いか分からないから、Photoshopも勉強して。それから外国人向けのPRに使えるサイトとかもいろいろ教えてもらってやってみました。そしたらトリップアドバイザーでランキング2位まで上がっちゃって!そこから外国人のお客さんがだんだん増えてきたんです。ウチのお店ってホームページもないのに外国人のお客さんが次々と来てくれるんでビックリしましたね。

小林:凄いですね。でもその心遣いや気持ちが口コミを通して伝わったからじゃないですか?

徳永、Michi:そう思いたいですね。

これが無いとメニューが決まるまで30分も掛かっちゃうんです

小林:ちなみにメニューは見やすくて素晴らしい作りですね。

徳永:このメニューも今まで5回くらい直したんですよ。

Michi:そうそう、ここまで作り上げるのにめっちゃ大変だったんですよ。外国人の方が嫌いなメニューを外したり、逆に好きなメニュー入れたり。実は日本人と外国人のメニューって少しだけ違うんです。

小林:例えばどんな違いがあるんですか?

徳永:お酒は一緒なんですけど料理がちょっと違うんです。例えば外国人向けメニューでは「とろろ焼き」とかは載せてないんです。

小林:それは何故ですか?

徳永:最初は出してたんですけどね。注文しても皆さん絶対に残して帰られるんですよ。たぶんベタベタする食感が嫌なんだと思います。

Michi:そうそう、だから外国人の方が毎回残す料理は2、3品外したかなぁ。

小林:他に外した料理を教えていただけますか?

徳永:ずりの唐揚とかですね。内臓系が苦手な人多いので。あと、これは外した訳じゃないんですが、ウチの焼きおにぎりは炊き込みご飯の焼きおにぎりなんですよ。でもこれも外国人の方は必ず残して帰るんです。

小林:えっ、そうなんですか?

Michi:「炊き込みご飯」っていう物が分からないからだと思います。ご飯と言えば白米ってイメージを持たれてるみたいで。だから白米に変えてみたら皆さん食べてくれるんですよ。

徳永:それと、コースもちょっと違うかな。外国人向けに内容を少し変えてます。例えば馬刺しを外したり揚げ物を多くしたりとか。

小林:なるほど。

Michi:日本食通の方で馬刺しを食べる人も増えて来ましたけどね。でも初めての人とかはやっぱり敬遠されるので外してます。

徳永:あっ、後はベスト5を作ったこと。

小林:あっ、この人気メニューベスト5のことですね?

Michi:そう、これも最初無かったんですけど後から作ったんですよ。これが無かった時は皆さんメニューをずーっと見ててオーダーが決まるまで20分とか30分掛かっちゃう人もいたんです(笑)

小林:えー!そんなに?

Michi:そう。でもこれを作ってからだいぶ楽になりました。とりあえず人気メニューをオーダーしてもらって、こっちが準備している間に他のメニューを見て注文してくれるので。

小林:なるほど。そう考えると完璧なメニューですね。写真も全部丁寧に載せてますし。

Michi:写真は絶対必要ですね。文章でいくら書いても絶対理解出来ないですから。

小林:いや、この完成度はスゴいですよ。

徳永:本当に頑張って作ったもんなぁ。でも、まだまだ改善する予定ですよ。

Michi:うん、ウチもまだまだ改善が必要な段階ですから。ちょこちょこ間違ってる所あるんで、そこは見ないでくださいね(笑)

小林:これから改善を重ねられてどんなメニューが出来上がるのか楽しみです。

徳永:そうですね。それにメニューだけじゃなくて料理や接客面ももっと外国の方に満足してもらえるようにならないといけないので。

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「追加で10本ちょうだい!」ってオーダーが一気に増えた

小林:ではお料理の部分で工夫されてることを教えていただけないでしょうか?

徳永:今では店のウリになってるんですけどウチの焼鳥ってスモークかけて焼いてるんですよ。「スモーク焼鳥」って言ってるんですけど。

小林:それがどういった効果に繋がっているんですか?

徳永:いや、これがスゴいんですよ。オーダーがかなり増えました。例えば以前はねぎまを2本頼まれてそれで終わっていたのが、スモーク焼鳥にしてからは「追加で10本ちょうだい!」ってオーダーが一気に増えたんです。

Michi:うん、それは本当そう。

小林:それ面白いですね!ちなみに理由は何なんでしょう?香りでしょうか?

徳永:ウチの前菜ってスモークチキンなんですけど、これが凄く人気があるんですよ。みなさん「美味しい」って仰ってくださる。だから「外国人の方はスモークが好きなんだな」と思って始めたんです。

Michi:スモークって言っても日本人が思う程のスモークではないですよ。香りと香ばしさアップする程度です。でもそれだけで旨みがすごく出るんですよ。

徳永:そう、正直手間も掛かるんですけど、どの国の方も喜んでくださるんで「スモーク焼鳥」にして大正解でしたね。実際焼鳥のオーダー数もかなり増えましたし。もちろん日本人のお客さんにも好評なんで焼鳥のレベルを1つ上げることが出来たかなと思ってます。

Michi:スモーク焼鳥を出すようにしてからは「日本でいろんな店で焼鳥を食べたけど、ここの焼鳥が一番美味しいね。」って言ってくれる人がすっごく増えたんです。それはすごく嬉しい。

小林:それはスゴいですね!これから「スモーク焼鳥ブーム」が来るんじゃないですか?

徳永:その時は「ウチが火付け役だぞ」って自慢しますよ(笑)それとウチでは焼き加減もいろいろ変えてるんですよ。外国人の方はこれくらいの焼き加減でみたいな。ささみとかは基本的にレアで出すんですけど外国人のお客さんの場合は注文の時に聞きますね。ミディアムが良いかウェルダンが良いかとか。

小林:そうなんですか。

徳永:味付け自体も梅肉は使わずにワサビ置いたりとか。

Michi:とにかく細かい所にすごく気を使うようにしてます。そして、それが一番大事だなと思ってます。こういう細かい事って現場にいる人間しか気付けないんで。外にいる人では絶対に分からない。だからとにかくスタッフ全員で気付いた事を「共有して改善」を繰り返してます。

翌日見てみたら口コミを書いてくれててビックリしました

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小林:お店を知ってもらうためのPR方法について教えていただけますか?

Michi:やっぱり一番はネットですね。

徳永:うん、ネットやな。

小林:具体的に何をされたんでしょうか?

Michi:SNSとトリップアドバイザーを中心に使えそうな物は何でも。

小林:SNSはFacebookでしょうか?

Michi:FacebookとかTwitterとかInstagramとかやってますけど、まだまだ少ないです。だから外国人観光客が何を見て来店してるかって言えば、やっぱりトリップアドバイザーが一番かな。

小林:一時は大阪のレストランランキング2位まで上がられたんですよね?

徳永:そうなんです。あれはちょっとビックリしました。

小林:2位まで上がったのは何かきっかけがあったんですか?

Michi:口コミが増えたのが大きいですかね。その中でも口コミ500件くらい書いてる人がお店に来てくれたんですよ。それは後で分かったんですけど。その人は一人で来られたんですけど、トリップアドバイザーで口コミ書いてるなんて話はされませんでした。こっちはいつも通り普通に楽しく喋って楽しんでもらって。で、その翌日見てみたら口コミを書いてくれててビックリしましたもん!しかもすーっごく丁寧に。そう考えたらウチはお客さんに恵まれてるんだなと思います。

小林:口コミの影響ってスゴいですね。では、やはりトリップアドバイザーは活用できると。

Michi:はい、本当に大事だと思います。

小林:トリップアドバイザーを見て来られる方は、ある程度メニュー決まってたりするんでしょうか?

Michi:うん、決まってる人は多いですね。前もって見られてるんだと思いますよ。

小林:トリップアドバイザー経由で来られる方はどこの国の方が多いとかはありますか?

徳永:国はバラバラですね。最近だとヨーロッパの国のお客さんが増えて来ましたけど時期によって変わるので。本当にいろんな国の方が来てくださってます。

こればっかりは「しょうがない」と割りきってます

小林:では次に予約の受け方について教えてください。予約は電話とかメールで来るんでしょうか?

徳永:電話、メール以外にホテルからの予約もありますね。今はホテルからの予約が4割くらいかな。あとはメールが多いですね。電話はほとんど無いです。たまに来たら僕かMichiが対応してます。

小林:そうなんですね。ちなみに予約の際に気を付けておられる事ってありますか?

Michi:うーん、特に無いですね。普通に受ける。

徳永:うん、そして結構な確率で来ない(笑)

Michi:そう!本当に来ない(笑)

小林:そうなんですか…。最近銀座のお寿司屋さんが外国人のお客さんの予約を断ったことで「外国人差別だ!」って話題になったのはご存知ですか?

Michi:あ〜、それ知ってます。ネットのニュースとかで出てましたよね。でも正直な所、あのお寿司屋さんの気持ちはすごく分かります。ウチの場合は席数も多いので、コース料理の予約でなければロスは出にくいようにしてるんで気にせずに予約受けられますけど、あのお寿司屋さんってカウンターだけの小さいお店じゃなかったでしたっけ?それでウチみたいなキャンセル率だったら大変ですよ。鮮度が命の食材だからその日に捨てないといけないでしょうし。

小林:そうですね。これは難しい問題だなと思いました。

徳永:ホテル経由での予約であっても来ない方おられますからね。あれだけはどうやっても防げないですよ。先日もコース料理で8名の予約が入ったんですけど、待てど暮らせど来なくて。あれはさすがにキツかった(笑)

小林:そういう時って連絡とかは無いんですか?

徳永:無いです(笑)まぁ、連絡する手段も無いというのもあるんでしょうけど。

Michi:うん、だからわざわざ予約して来てくれてるんで絶対に断らないです。先入観とかは持たずに全部受けてます。ただ他のお客さんの予約や当日飛び込みで来られるお客さんもいるので「◯分以上遅たらキャンセルとさせていただきます」ってお伝えするようにしてるんですよ。そうしておけば遅れて来られてもちゃんと説明できるので。それに私は外国人の友達が多いんでキャンセルとか遅刻が多いって知ってるんですよ。日本に住んでる外国人の子でもそうなんで今さらビックリしないですね。こっちが慣れるしか無いと思いますよ。

徳永:そう、こればっかりは「しょうがない」と割りきってます。

小林:なるほど。ちなみに予約が入るタイミングって来店のどれくらい前なんでしょうか?

Michi:うーん、バラバラですね。当日の人もいるし。

徳永:そう、逆に2か月前にメールで予約してくる人もいれば、イギリスから電話掛かって来たこともありますし(笑)

Michi:で、来ないっていう(笑)でも旅行ってテンション上がるじゃないですか。その時のノリで予約したっていうのもあると思うので攻められないですね。

まとめ

インタビュー前半はいかがでしたでしょうか?
徳永さんとMichiさんは常に「お客さん目線」でメニュー作りや料理のレベルアップを追求しているという事がとても伝わって来ました。
外国人の方の「連絡なくキャンセル」や「大幅な遅刻」に関しても変えることのできない環境に嘆くのではなく、その中でされている最大限の努力や工夫はぜひ見習いたいですね。
インタビュー後半では「接客のアドバイス」や「トラブルの回避方法」や「今後の展望」など更に充実した内容でお届けしますのでお楽しみに!

<後編>へ続く

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