「みんな力いっぱい握手して「サンキュー!サンキュー!」って何度も言ってくれる」 – 社団法人 日本殺陣道協会 会長 八木哲夫さんインタビュー <後編>

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イロドリの小林です。

今回は前回に引き続き社団法人 日本殺陣道協会の会長である八木さんのインタビューの後編をお届けいたします。

前編をご覧になられていない方はこちらからどうぞ。

「たくさんの授業の中の1つにあったのが「殺陣」だったんです」 - 社団法人 日本殺陣道協会 会長 八木哲夫さんインタビュー
イロドリの小林です。インバウンドはモノ消費からコト消費へこれは最近メディアでよく使われているフレーズで、外国人観光客が爆買いをはじめとする「買い物」から文化や自然を楽しむ「体験」へと興味が移り変わっているということを表したものです。そしてその「コト消費の最前線にいる」と言っても過言ではないのが今回インタビュー協力いただいた日本殺陣道協会の八木さんです。八木 哲夫(ヤギ テツオ)東京で生まれ育ち定年までマスコミ業界で活躍。定年を迎えた後に「日本殺陣道協会」を設立し、日本人向けに殺陣教室を開講する...
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八木 哲夫(ヤギ テツオ)

東京で生まれ育ち定年までマスコミ業界で活躍。
定年を迎えた後に「日本殺陣道協会」を設立し、日本人向けに殺陣教室を開講する。
ここ数年で外国人からの人気が一気に高まり団体客から個人客まで客足が絶えない状態が続いている。

前編では八木さんがマスコミ業界でご活躍されたお話やそこから殺陣教室を開業された経緯についてのお話を伺いました。

そして後編ではついにその殺陣教室が外国人からの人気に火が点いたキッカケや八木さんならではのアイデア、八木さんが見る今後の展望まで気になることが目白押しですのでお見逃しなく!

「THIS IS SAMURAI」っていう世界観を楽しんでくれるんですよ

小林: では続いては殺陣教室が外国人観光客からこれだけ人気になった理由について伺っていきたいと思います。最初に外国人の方が来られたのはいつだったんでしょう?

八木: 3年前くらい前かなぁ。旅行会社さんから連絡があって「アメリカ人のお客さんを受け入れていただけませんか?」って相談されたんですよ。でもウチは英語を話せる人がいなかったから通訳を付けてもらってね。

小林: なるほど。それがスタートなんですね。では、初期は旅行会社からの送客がメインだったんですか?

八木: メインどころか100%でしたよ。お客さんがあまりにも喜んでくれるから旅行会社さんも何度も連れて来てくれてね。だからその頃は今みたいに個人旅行のお客さんが来るってことはなかったですよ。

小林: そうなんですか。ということは、この後にその秘密も聞けるということですね?

八木: ハハハ(笑)そんな大層な話じゃないけどね。原因は2つあって、1つは当時先生をしてくれていた人が英語を覚えてくれたこと。これによって旅行会社からの送客がさらに増えて外国人の間でクチコミが発生したんですよ。そしてもう1つは演出かな。

小林: あっ!あの効果音ですね!?

八木: そうそう。ここまで人気になれたのはあれの存在がすごく大きいと思う。刀と刀がぶつかった時には「シャキンッ!」、相手を切った時には「ブシュッ!」と音が鳴る。そして各シーンに応じてBGMが流れたり風の音が鳴ったりね。そういう「THIS IS SAMURAI」っていう世界観を外国人のお客さんがすごく楽しんでくれるんですよ。

小林: 確かに僕も以前テレビ取材の立ち会いの際に見させてもらいましたが、外国人の方々が本当に楽しそうだったのが印象的です。彼らの目が侍になりきってましたもんね。この音の演出は本当に素晴らしい発想だと思いました!あの発想はどこから出て来たんですか?

八木: どこからも何も僕は元々テレビマンだからね。ドラマとか映画で使っていたものを取り入れたっていうだけですよ(笑)

photo-k00158-01番号を押すと効果音やBGMが流れる仕組みになっている

小林: なるほど!八木さんは殺陣からではなくて“演技”から考えているから殺陣をこういう形で組み合わせているんですね?

八木: そうだね。初めから殺陣でやっている人たちだったらそういう発想はなかなか出ないと思いますよ。僕は常にエンターテイメントの視点でしか考えられないから。

小林: なるほど!これですべてがしっくり来ました。これは八木さんならではの発想ですね。

八木: 今では色んな所に真似されてますけどね(笑)でもエンターテイメントが広がって行くのは僕にとって嬉しいことだから良いんだけど。どちらにしろ自分の中で「これをやりたい人がいるはず!」と思って始めたことだから「やっぱり間違ってなかったんだ!」ということが分かって嬉しいですよ。

小林: 素晴らしい功績ですね。ちなみに日本人と外国人でやっぱり反応の違いってありますか?

八木: もちろんもちろん。感性が全然違うからね。最初に稽古をしてから本番の演技をするんだけど外国人はのびのびと楽しんでやってますよ。日本人は決められたことをちゃんとやるのは得意なんだけどね。彼らは自分オリジナルの表現力を見せてくれるから面白いですよ。教育の違いなんでしょうね。

小林: 確かに、それは見ていて感じます。

八木: 昨日もね、9歳のロシア人の男の子が来てたんですよ。聞いたら「忍者が好き」っていうもんだから忍者をやらせてあげたんですよ。そうしたらちょっとしか練習してないのに完全に忍者になりきっちゃってね。それが画になるから本当に面白いですよ。

小林: なるほど。

みんな力いっぱい握手して「サンキュー!サンキュー!」って何度も言ってくれる

小林: ちなみに今までで印象に残っている人はいますか?

八木: うーん、いっぱいいますけどね。今パッと思い付いたのはリトアニア人の女の子かなぁ。突然1人でやって来てね。しかも綺麗な子なんですよ。それで「サムライになりたい」って(笑)

小林: え!女の子が1人で!?勇気ありますねぇ。

八木: だよね。それで「何でサムライになりたいと思ったの?」って聞いたら「るろうに剣心が大好きだから!」って。結局1人で体験して最後は「すごく楽しかったー!」って喜んでくれましたよ。

小林: それは印象的ですね。皆さんサムライ体験ができたことに感動しているのが伝わって来ますよね。それもすごく印象的です。

八木: うん!そうなんだよね。体験が終わった後にみんな力いっぱい握手して来て「サンキュー!サンキュー!」って何度も言ってくれるんですよ。それも国籍も性別も年齢も関係なく。海外の人って「サンキュー」って気軽に言ってくれるじゃない。でもあそこまで力強く言われると「そんなに感動してくれたんだ。やってて良かったなぁ。」って思いますよ。

小林: それはすごいことですよ。

八木: おそらく国に帰ってから家族や友だちに写真や動画を見せながら「私も剣心になって来た!」「俺はナルトになって来た!」とか言ってくれてるんじゃないかなと思うと嬉しいですよね。

小林: きっと言ってるはずですよ。ちなみにサムライになりたい人は「るろうに剣心」、忍者は「NARUTO -ナルト-」に影響されている人が多いんですか?

八木: そうですねぇ。昔はサムライは黒澤明とかキル・ビルとかラストサムライとかの影響が大きかったけど。

小林: なるほど。ちなみに八木さんの感覚ではサムライと忍者はどちらの人気が高いのでしょうか?

八木: 今は忍者じゃないかな。NARUTO人気がとにかくすごいからね。

小林: そうなんですね。

誰と会っても何を食べてもどこへ行っても全部楽しい。これって最高でしょ。

小林: 今日お話を伺っていて思ったんですが、八木さんはこれまで「外国人の集客に力を入れよう!」と思われたことはないということでしょうか?

八木: うん、全然ないですよ。ありがたいことにマスコミや旅行会社さんや他の皆さんが手伝ってくれているだけで広告宣伝もしたことないですから。

小林: なるほど。でもそれも八木さんが生み出した新しい価値とお人柄があってのことですよね。ちなみにこれまで外国人のお客さんとのトラブルはどんなことがありましたか?

八木: うーん…、1回もないなぁ。

小林: え!?1回もですか!?

八木: うん、1回もない。常に「いつ何が起こってもおかしくない」とは思ってるけどね。2015年の1年間だけで33カ国から1,440人の人たちが来てくれましたけど本当に1回もないんですよ。

小林: それはすごいですね!実際マナーやトラブル面を気にされている方も多いんですが、そういう方にとってはかなり貴重な情報ですよ。

八木: それは良かった。ただ、強いて言えば個人旅行客のキャンセルかな。ネットで予約だけしておいて来ないっていう。

小林: キャンセルというよりはいわゆる“ブッチ”ですね?

八木: そうそう。事前決済じゃないから準備した分はそのまま赤字だからね。それにもしかしたら他のお客さんがそこに入れたかもしれないし。これが増えて行くのは経営的にも痛いので事前決済の申込だけを受けるようにして行きたいなと思ってます。

小林: なるほど。確かにそれは切実なことですもんね。それでは次に八木さんの中での「インバウンドビジネスの楽しさ」を教えていただけないでしょうか?

八木: うーん、やっぱり喜んでくれるのが一番だよね。僕も色んな国の人と出会えるし。ただ、欲を言えばもっと彼らとコミュニケーションを取りたいかな。“体験して終わり”ではなくて、その後に30分でも良いから彼らの街の話とか聞けたら最高だよね。そこで仲良くなって「じゃあ、今度僕の国へ来たら家に泊めてあげるよ!」なんて言ってくれる友だちがたくさんできれば世界一周旅行に行けるかもしれないし!

小林: なるほど!笑 八木さんは本当に人とのコミュニケーションがお好きなんですね!

八木: 僕が殺陣教室をやっているのは「コミュニケーション」と「ボケ防止」のためだからね(笑)

小林: ボケ防止(笑)そう言えばメールだけでも1日50通くらい処理されてるって仰ってましたよね?

八木: そうそう。だからスマホは片時も離せないですよ(笑)キッチンだろうがお風呂だろうがどこへでも持って行ってメールはすぐ返すようにしてます。

小林: それはボケる暇もないですね(笑)

八木: そうそう!それにね、やっぱりこうやっていろんな人とやり取りしていると本当に楽しいから。自分で言うのも何だけど定年退職する前はそこそこ良い給料を貰えてたのよ。何千万円ってね。でもそれが今は10分の1とかになっちゃった。

小林: え!そうなんですか!?すごーく儲かってそうに見えるんですが…。

八木: ハハハ!よく言われるんだけどね。実際は全然ですよ(笑)そもそも僕は年金生活者だし。経費や協力してもらっているスタッフの人たちにお金を支払ったらお終い。だから僕は無給ですよ(笑)

小林: そうなんですか…。衝撃的な情報ですね…。

八木: いや、お金にかえられない体験をできているからね。毎日毎日、朝から晩まで最高に楽しいですよ。誰と会っても何を食べてもどこへ行っても全部楽しい。これって最高でしょ。

小林: 確かに八木さんからは楽しさしか感じません(笑)ちなみに八木さん、この内容って書かせてもらっても大丈夫なんですか?

八木: もちろん全然良いですよ(笑)それにこれだけ楽しんでたらその内に宝くじでも当たると思うし。

小林: 八木さんなら本当に当ててしまいそう(笑)

広島に同じ殺陣教室があっても良いじゃないですか

小林: それでは次に日本殺陣道協会の今後について伺っていきたいのですが、現在の受入キャパはまだ一杯っていう訳ではないんですよね?

八木: うん、全然まだまだ行けますよ。今の倍は余裕でしょう。スペースは何とでもなるんです。今も団体客の場合は大きい会場を借りてやってるしね。

小林: そうなんですか。

八木: そうそう。それにこのモデルを自分だけでやって行こうとも思ってないんですよ。例えば広島に同じ殺陣教室があっても良いじゃないですか。宮島へ行った帰りに1時間くらい体験するとか。

小林: それを全国に広めて行くと。

八木: うん、全国で演劇に携わっている人って一杯いるんですよ。その人たちが僕らの看板とノウハウを取り入れてくれれば彼らにとっても新しい仕事になるじゃないですか。そうすれば本当にやりたい事にも集中できるし。

小林: なるほど。

八木: だから今そういう人を育てるための研修プログラムも作っている所なんですよ。それを修得したら開業してもらう。そうすれば旅行会社さんからの依頼を本部で受けて各地に回すこともできると思いますしね。旅行会社さんも選択肢が増えるのは嬉しいでしょうし。

小林: 良いですね。そしてさらに海外展開とか?

八木: うん、考えてますよ。そしたら海外出張ということで色んな所へ旅行できるからね。

小林: やっぱり(笑)

八木: 元気な内に世界をたくさん見て回りたいからね。現地に住んでいて殺陣教室をやりたい人がいたら日本まで来てもらって研修プログラムを受けてもらった後に母国で開業してもらうんです。

小林: 開業ハードルも低くて良いですね。

八木: うん、殺陣って言っても剣道や柔道と違って難しいことをする訳じゃないからね。結局は「演技」ですから。基本的な型と作法を覚えれば、あとは刀を使って演技するだけですから。

小林: なるほど。殺陣からではなく演技からの視点で見ている八木さんならではの考え方ですね。ちなみに八木さんがサービス提供者として一番大切にされていることって何なのでしょう?

八木: そりゃやっぱり「コミュニケーション」ですよ。やっぱり人ですよね。僕は授業でもずっと「コミュニケーション演習」っていうのをやってたのもあって、共通のツールや話題があれば人はコミュニケーションが取れることを知ってるんです。そう考えると「侍」って良いコミュニケーションツールになりそうじゃないですか。

小林: そうですね。

八木: 外国人が見ても「ワ〜オ!サムライ!」なんて言ってね。

小林: 確かに日本人が外国人とコミュニケーションを取るのには最高のツールかもしれないですね。

それがないといくら綺麗に形だけ作ってもダメじゃないかなぁ

小林: 最後にインバウンドビジネスに取り組まれている人たちに何かアドバイスをいただけないでしょうか?

八木: うーん、アドバイスなんてできるような立場じゃないけど、あえて言わせてもらうならやっぱり「想いやり」と「気配り」だよね。それがないといくら綺麗に形だけ作ってもダメじゃないかなぁ。

小林: なるほど。

八木: 例えばレストランで美味しい料理を一生懸命作って出すことも大切なんだけど、それよりも人と人との関わりが一番大切なんだよね。僕らが海外へ行った時でもそうじゃないですか。店員さんがすごく気さくに接してくれたら気持よく「サンキュー!」って言いたくなるけど、いくら美味しくても無愛想な対応だと寂しい気持ちになるじゃない。

小林: それは本当にそうですね。

八木: 僕も楽しかったお店で過ごした時間を大切に感じるタイプだからね。だから自分もサービスを提供する時はそれを大切にしたいんですよ。

小林: なるほど。それはすごく共感できます。人とのコミュニケーションを大切にされて来た八木さんだからこそ、これだけメディアにも取り上げられて人気もあるんでしょうね。

八木: そうだと良いんだけどね(笑)でもこれからも国内外問わず色んな人と繋がって面白いことをどんどんやって行きたいですよ。

小林: それは楽しみですね。

八木: 例えば富裕層向けの体験サービスも近い内に作ってみたいんですよ。年間10人とかで良いからとびっきりの体験ができるやつを。

小林: それも面白そうですね(笑)

八木: だって関西って忍者なら伊賀や甲賀もあるし、高野山で宿坊体験もできるし、上手く連携が取れれば面白いサービスを作れると思うんだよねぇ(笑)

小林: 確かに。旅行会社さんに協力してもらえば本当に作れてしまうかもしれませんね。

八木: うん、これはできれば年内に作りたいんです。僕の1つの「夢」だね。

小林:なるほど。僕らも微力ながらお手伝いできることがあればぜひ!本日は本当にありがとうございました。

八木: こちらこそありがとうございました。

まとめ

日本殺陣道協会の会長である八木さんのインタビューを前後編に渡りお届けしましたがいかがでしたでしょうか?
八木さんとお話していて一番感じるのはお客さん以上に八木さん自身が楽しまれているという点です。
「サービスを提供しているというよりはエンターテイメントを提供している」という感覚に近いのだと思います。

そして、それが周りに伝わり広がっていくことで、また新たな「楽しい」が八木さんの元に集まっているのだと感じました。

また、これから日本殺陣道協会はさらに大きくなるはずなのでビジネス面でどう発展して行くのかも注目ですね。

コト消費(体験系サービス)に注目が集まりはじめている中で、八木さんのような功績を残されている方の存在は大変貴重です。
その成功モデルを関西、そして日本全国に広げて行くことができれば日本の体験サービスはさらに盛り上がるということを教えてもらいました。

八木さん、この度は本当にありがとうございました!

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