イロドリの小林です。
訪日外国人による「インバウンド消費」が注目されはじめたのが2014年頃。
そして2015年には中国人観光客を中心とした日本での「爆買い」が流行語大賞となるなど注目度は一気に高まりました。
先日の「「モノ消費」「コト消費」について最新の訪日外国人観光客消費データから分析してみた」でも紹介しましたが、観光庁から発表された2016年の消費行動データによると1人につき1泊あたりでの買い物消費額は中国が2位の香港に2倍近くの差を付けての圧倒的トップとなっています。
順位 | 国 | 金額(円) | 前年(2015年)比 |
---|---|---|---|
1位 | 中国 | 20,283 | ▲21.18% |
2位 | 香港 | 11,803 | 8.30% |
3位 | 台湾 | 8,807 | ▲18.08% |
4位 | タイ | 8,191 | ▲2.22% |
5位 | ベトナム | 6,239 | ▲45.51% |
中国は前年比20%以上ダウンしていてこの数字なので、恐るべき消費意欲ですね。
※ただし、円ベースの数字なので2015→2016で円高になった影響も考慮する必要があります。
とは言え、2位の香港も11,803円、3位の台湾も8,807円を1泊あたりの買い物に費やしていますので、香港と台湾をターゲットにしている方も多いはず。
そんな人にとってノドから手が出るほど欲しい情報と言えば「今、彼らや彼女たちが何を買っているのか?」ではないでしょうか?
しかし、その情報を正確に把握できているのはドン・キホーテやイオンといった大手ストアだけかと思います。
ところがそんな彼らでも他店や日本以外の国で購入されている商品まではなかなか把握することはできません。
しかし、今は本当に良い時代になりましたね。
なぜならSNSを活用すればターゲットユーザーの投稿を直接覗くことができるからです。
もちろん投稿を見るだけなので定量的なデータではないですが、定性的な情報収集にはとても役立ちます。
そして今回ご紹介したいのが若者を中心とした台湾人&香港人(主に女性)の「爆買いアイテム」が一目で分かる「#戰利品」というハッシュタグです。
このハッシュタグは台湾&香港のインバウンドまたはアウトバウンド市場でチャンスを掴もうとしている方にとっては役立つ情報が満載だと思うので、ぜひリサーチや商品企画に活かしていただければと思います。
「#戰利品」はSNS上で開催される爆買いの自慢大会!
台湾人や香港人と言えばFacebookの普及率が世界一位になったこともあるほどSNSが大好きな人たちです。
そんな彼女たちにとって旅行先で爆買いしたアイテムをSNSで自慢することは一大イベントとなっています。
そしてその時に使われるのが「#戰利品」というハッシュタグというわけですね。
「戰利品」という字をよくよく見てみると日本語の「戦利品」とは“戦”の字が違いますよね。
これは台湾や香港で使われる中国語の繁体字の“戦”という字です。
ちなみに中国本土の人たちが使う簡体字だと「战利品」という字なので、「#戰利品」のハッシュタグは基本的に台湾人と香港人が投稿する時に使っているということになります。
そして 「#戰利品」のハッシュタグを見ると文字通り買い物でGETした「戦利品」を披露している様子を見ることができます。
いや〜、みなさん本当に楽しそう&たくさん買ってますね!笑
訪日外国人観光客の行動を「旅マエ(訪日前)」「旅ナカ(旅行中)」「旅アト(帰国後)」という言葉で表現されますが、この戦利品のお披露目は「旅アト」の一大イベントと言えるでしょう。
ちなみにこの記事のトップ画像は弊社の台湾人スタッフのシュが3年前に沖縄旅行へ行ったときの「戰利品」です ^^
日本人の「戦利品」とはニュアンスがちょっと違う
Instagramを見てみると日本語の「#戦利品」というハッシュタグもあります。
私はもっと少ないと思っていたのですが予想以上に投稿数が多く、中国語の4倍以上も投稿されていました。
※2017年5月16日時点で日本語は83,052件、中国語(繁体字)は18,471件
ただ、台湾と香港の人口を足して4倍にすると日本の人口と同じくらいになるため、使用率は同じくらいだと考えることもできそうですね。
私は今まで「戦利品」というハッシュタグを付けて投稿したことはないですが、日本の人たちもかなり活用しているということが分かってきました。
ただ、1つ事前に知っておきたいことがあります。
それは私たち日本人が使う「戦利品」と彼女たちが使う「戰利品」は意味が少し違うということです。
もちろん正式な意味は「戦いに勝利して手に入れた品」という同じ意味なのですが、ブログやSNSでシェアする時だけは少しだけ文脈が変わってくるのです。
それも踏まえた上でそれぞれの投稿を見比べていってみましょう。
主役はアイテム! 日本人の「#戦利品」
まずは日本人の「#戦利品」から見ていきましょう。
日本人にとって「戦利品」と言えばもちろん主役は「アイテム」ですよね。
実際にハッシュタグを見てもアイテムにスポットライトが当たっている投稿が目立ちます。
見ていただいて分かると思うのですが、日本の人たちはアイテム数が少ないですね。
大量買いをしている人もいますが、ジャンルごとに分けて撮影をしてアップするなど、「写真1枚1枚にテーマがある写真」が目立ちます。
あくまでも写真の主役はアイテムで、「こんなオシャレなアイテムをGETできたことを知って欲しい」という控えめなインサイト(本音)が見え隠れします。
もちろん中にはたくさんのアイテムを並べて投稿している人もいます。
例えばこちらの方はインドのお土産だそうですが、なかなかのアイテム数ですね。
また、日本人であれば「#爆買い」というハッシュタグの方がアイテム数が増えるかと思ったのですが、「THE 爆買い!」のような投稿はあまり見られませんでした。
主役は自分! 台湾人&香港人の「#戰利品」
さて、続いては台湾人と香港人の投稿を見ていきましょう。
なんとなくお気づきの方も多いと思いますが、台湾人&香港人にとっての主役は「こんなに爆買いした私」です。
シュの話によると「戰利品」というキーワードが流行りだしたのは10年ほど前で、ブロガーが旅行やショッピングでGETしたアイテムを自慢をするようになったのが始まりだったそうです。
そしてその投稿場所がブログからFacebookに変わり、そして今はInstagramに変わってきたという経緯があるようです。
そんな彼女たちのインサイト(本音)はズバリ「こんなに買った私ってスゴくない!?」に集約されます。
シュはこの価値観をとても分かりやすい表現で教えてくれました。
これらの文脈を知った上で投稿を見ると彼女たちの自慢大会をさらに楽しめるようになります。
この方は東京に行ったようですが、たくさん買ってますね〜。
でも、こんなのはまだまだ序の口ですよ ^^;
他の投稿を見ていきましょう。
こちらの方は同商品の複数個買いがスゴいですね!笑
続いてはこちらの方。
この量もさることながらキレイに並べる几帳面さもスゴいですね(笑)
続いては東京&埼玉を観光したこちらの方。
ちょっ……。
左後ろにダッフィーのお友達の「ステラ・ルー」のぬいぐるみが10匹も並んでますけど(笑)
ステラ・ルーは日本でしか買えないそうなので友人や知人に頼まれたのだと思いますが、それにしてもスゴい数ですね ^^;
もしかしてステラ・ルーやキティちゃんはスーツケースに入れる際に圧縮袋でペチャンコにされてしまったりするんでしょうか(笑)
続いての方は大阪に来られたようです。
お菓子を中心に爆買いされてますね。
そして最後はこちらの方です。
なんとこの方がGETした戰利品を含めた荷物の総重量はなんと70kgだそうです!驚
写真の右下あたりを見ると「ほろよい」などのお酒を買っていますし、化粧品などの液体も多いので「そりゃオーバーするでしょ ^^;」という感もありますが、それにしてもスゴい量です(笑)
このように「#戰利品」を見ていくと台湾人&香港人の若者がどんなものを爆買いしているのかが一目で分かってとても面白くないですか?
しかもビックリするのが基本的にこれらの写真に写っているアイテムは一緒に旅行に来ている友達や恋人のアイテムの合算ではなくて、自分ひとりで買ったアイテムだけだということです。
シュの説明によると、
とのことでした(笑)
もちろんアイテムの中には自分用だけでなく友達や家族へのお土産だったり、頼まれて買ったものも含まれていますが、それにしてもスゴい量ですよね。
※また、中には「代購」という代理購入ビジネスをしている人もいますがこの記事ではそれらしき人は除いています。
ぜひあなたも日本語の「#戦利品」と中国語(繁体字)の「#戰利品」を見比べてみてください。
きっとその世界観の違いにビックリするはずですよ。
日本以外の国で爆買いしたアイテムも見れる「#戰利品」の優秀さ
さて、ハッシュタグ「#戰利品」の良いところは日本での爆買いアイテムが見れるというだけではありません。
台湾人や香港人が日本以外の国で買ったアイテムも見れるのが面白いんです。
例えばこれは韓国での戰利品です。
続いてはタイ。
こちらはインドネシアです。
こちらはアメリカで爆買いされたセレブのようです ^^;
こちらのカップルはオーストラリアでサプリメントを爆買いしています。
こちらはドイツで。
左下は歯磨き粉でしょうか?
複数個買いがスゴいですね(笑)
そしてオランダもありました。
最後はイングランド&フランスです。
このように「#戰利品」を見れば台湾&香港の“若者の買い物事情”がリアルタイムで分かるので本当に面白いですし、勉強になります。
これらの投稿を見て新しいビジネスアイデアが思いつく人もいるのではないでしょうか。
「#戰利品」を見ていて気づいた3つのこと
さて、ここからは台湾人&香港人が爆買いしたアイテムを見ながら気づいた3つのことをご紹介したいと思います。
1. 日本の投稿がとにかく多い!
まず最初に感じたことは日本で買ったアイテムの投稿数の多さです。
とくにアイテム数の多い投稿は日本旅行の比率がかなり高いです。
もちろん絶対数として日本を訪れる台湾人と香港人が多いということもありますが、それを考慮しても「多いなぁ〜」と感じました。
ちなみに2015年のデータになってしまいますが、日本政府観光局(JNTO)の資料によれば台湾人の訪問先1位は中国で日本は2位、香港人の訪問先は日本が台湾を僅差でリードして1位となっています。
出典:日本政府観光局(JNTO)「台湾 基礎データ」、「香港 基礎データ」より
彼女たちの投稿を見ていると「日本でこんなに楽しんでくれたのかぁ」ということが分かって純粋に嬉しくなります ^^
2. 日本は買い物天国!
これは日本の投稿の多さにも繋がっていると思うのですが、投稿を見ていて感じるのは「日本は安くてユニークなモノがたくさんあるんだなぁ」とういことです。
彼女たちが実際に購入したアイテム数を見ると一個人が買い物をしたといレベルではなく、もはやちょっとした業者レベルです(笑)
また、他国での爆買いアイテムと見比べてもらうと分かるのですが、「いろんな物を大量に買う」という点では現時点で日本の右に出る国はないように感じます。
それに色鮮やかなアイテムがたくさんあるのでSNS映えしまくりですね。
さらに日本の強みが「地方都市でも買い物環境が整っている」という点です。
これは彼女たちが求めているモノと日本で販売されている商品のニーズが現時点でマッチしているから言えることでもありますが、東京や大阪でなくても彼女たちが買い物に困ることはありません。
例えばこちらの方は北海道で爆買いしたようです。
そして広島でも。
こちらの方は九州を周ったようです。
そして沖縄でも。
海外で地方やリゾート地へ行くとのんびりできますが、買い物の選択肢が少ない場合も多いですよね。
私も過去に海外へ行って買い物したくてもする場所がなかったり、お土産の選択肢が少なくて困ったという経験があります。
しかし、日本は至る所にお店があるので、よっぽどの田舎でない限り買い物には困りませんよね。
実際に弊社の台湾人スタッフのシュも力強い口調でこんな名言を残してくれました。
ということだそうです(笑)
そう考えると日本は「買い物天国」としての優位性を存分に発揮できていると言えると思います。
3. 地方は「県」ではなく「地域」でのPRが大切!
日本には海外の人たちに知られていない魅力的なスポットがまだまだたくさんあります。
ただ、「「モノ消費」「コト消費」について最新の訪日外国人観光客消費データから分析してみた」でも紹介した通り、アジアの国々の人たちにとって「買い物」は旅行の中でとても重要なイベントのひとつです。
なので、いくら素晴らしい観光スポットだったとしても「旅程に買い物が組み込めないかも?」と思われたら敬遠されてしまうかもしれません。
例えば今や大人気の観光スポットとなった岐阜県の「白川郷」や富山県と長野県を繋ぐ「立山黒部アルペンルート」も愛知県という買い物スポットを確保できているからこそルートとして成立しているという見方をすることもできます。
もちろん愛知県が「買い物はしてくれるけど滞在してもらえない」というジレンマも抱えているという側面もありますが、「昇龍道」という地域でPRできているからこそインバウンド市場を取り込めていると言えるでしょう。
出典:ようこそ昇龍道のHPより引用
インバウンドの人たちにとって「都道府県を区別する線」はほとんど意味を持ちません。
地方自治体のインバウンド担当者の方は自県の魅力を伝えることも重要ですが、「ターゲットのニーズ」と「自県の役割・強み」をしっかりと把握し、都道府県の枠を越えたPRができるかどうかが成功のカギとなるのではないかと思います。
まとめ
今回は台湾&香港の若者が爆買いアイテムを披露する際に使っているハッシュタグ「#戰利品」をご紹介しました。
彼女たちの写真を見て「こんなに買ってるの!?」と驚かれた方も多いのではないでしょうか?
本質的に人間にとって「消費することとは生きる喜びのひとつ」です。
彼女たちの投稿を見ていると日本でその喜びを感じてくれているのが分かって本当に嬉しいです。
ただ、同時に肝に銘じなくてはいけないのが「この状況が永遠に続くことはない」ということです。
私たち日本人がバブル時代に大量買いをしていたものの現代では価値観が変わったのと同様に、彼女たちの価値観も環境の変化とともに時間をかけて少しずつ変わって行くはずです。
大切なのはそういった「価値基準のパラダイムシフト」を敏感に捉えることになってくるでしょう。
その時に彼女たちの欲求に合ったものが提供できていれば選ばれ続けることができますし、逆にできていなければ見向きもされなくなってしまいます。
このバランスを取ることはとても難しいことだと思いますが、何よりも大切なのは「ターゲットを深く知ること」に他なりません。
そのためにも今回ご紹介した「#戰利品」は有効な手段のひとつだと思いますので、ぜひ活用していただければと思います。
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