こんにちは。
イロドリの今津です。
突然ですがあなたはムスリム(イスラム教徒)についてどんなイメージをお持ちでしょうか?
「豚肉やアルコールが禁止」「断食」「女性はヒジャブ(頭に布)を被っている」「1日5回メッカの方角を向いてお祈りしている」などムスリムと言えば厳しい戒律を守らなければいけないというイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。
そしてその厳しいイメージからムスリムの対応をするのは大変なことだと思っていませんか?
確かに戒律の厳しい人の基準に合わせると、ハラル専用のキッチンの用意、ハラル管理者であるムスリムの雇用、レストランでのアルコール提供の全面禁止などを求められることがあるため対応が大変なのは事実です。
しかし、実はムスリムと言っても国や人・宗派によっても考え方は大きく異なるため、色んな人たちが存在しているのです。
例えば、私が住んでいたキルギス(ムスリムが約75%を占める国)では、断食やお祈りはするけれども、厳禁とされるアルコール(ウォッカやビール)を好き好んで飲む人もいました。
また、キルギス以外の国でも「自分の国では絶対にお酒は飲まないけれど日本ではお酒を飲むことがあります」と話すエジプト人留学生にも出会ったこともあります。
しかし、そんな戒律のゆるい人たちでも「日本は安心して外食できるお店は少ない」と言います。
そしてそれは「ちょっとした対応ができているかorできていないかの違い」だと彼らは言うのです。
もしも、その「ちょっとした対応」が大きな費用をかけることなくできることだったら挑戦してみる価値があると思いませんか?
なぜなら上手く行けば新しいお客さんを呼び込める可能性があるかもしれないからです。
そこで今回は戒律のゆるいムスリムを受け入れるために飲食店がしておくべき対応について紹介して行きたいと思います。
ただし、今回紹介するのはあくまでも戒律のゆるい人たちに限定されますので、厳格なムスリムには対応できないことを同時にご理解ください。
また、厳格なムスリムの方々に誤解を与えないようにするためのポイントも後ほどご紹介いたします。
「ムスリム対応 = ハラル認証だけではない」という事実
ムスリム対応について紹介する前に、まずはムスリム対応と関係性の深い「ハラル認証」についてお話したいと思います。
ハラル認証とは、イスラム教の戒律に則って調理された料理を提供しているお店であることを証明するものとなります。
また、ハラル認証には国際的な統一基準がなく、認証する機関も日本だけで20以上が存在し、それぞれの基準が異なっています。
そのためハラル認証を取得する際には、ターゲットとする人の基準にあった認証を取得する必要があります。
※例えばマレーシア人をターゲットにする場合は、マレーシア政府のハラル認証機関(JAKIM)と連携した日本の機関でハラル認証を取得するのがもっとも良いとされています。
特に厳格なムスリムの方をターゲットにして集客していく場合は、ハラル認証を取得することはとても大切なことです。
実際、ムスリム対応をしていきたいと考えている飲食店の方とお話させていただくと、ムスリム対応していくためにはハラル認証を必ず取得する必要があると思われている方がとても多いです。
しかし「ムスリム対応=ハラル認証取得だけではない」ということを知ってほしいのです。
なぜならムスリムにも色んな考え方の人たちがいるからです。
そのため、厳格なムスリムをターゲットにするのではなく、戒律のゆるい人たちをターゲットに絞れば必ずしもハラル認証が必要になるというわけではないということです。
まずは、ムスリムの人に対する基本的な知識を理解し、できる範囲内で配慮しながら対応していく「ムスリムフレンドリー」という考え方に基づき行動していくことが大切だと私は思います。
それではムスリムを受け入れていくために、「食」「礼拝」「集客」の3つポイントにおいての基本的な知識や対応する上で大切なことを紹介していきます。
1.食において大切なこと
まずは食に関するムスリム対応についてお伝えしようと思います。
日本人の私たちもそうですが、旅行の楽しみに「食事」は欠かせない要素ですよね。
同じようにムスリムの人たちも食事を楽しみにしています。
しかしイスラムの教えでハラル(許された行為・物)とハラム(禁じられた行為・物)が決められているため、その教えに基づいた食事をしなければいけません。
そのため、ムスリムの対応ができていないお店が多い日本では、どの料理がハラルでどの料理がハラムなのかが分からないため安心して食事を楽しむことができないのです。
なかには自国から持参した食べ物を旅行中に食べている人もいるそうです。
そんなムスリムの方たちにも日本で食事を楽しんでもらえるようにするためには、まずは何がハラム(禁じられた物)で提供してはいけない食べ物なのかを知ることが必要です。
まずムスリムの方にとって厳禁とされている食べ物は「豚肉」と「アルコール」です。
豚肉
「豚肉」が食べてはいけないものだと、ご存じの方も多いかと思います。
しかし注意すべきは豚肉だけでなく豚由来成分なども口にしてはいけないということです。
例えば、
・豚肉を使用した加工食品(ベーコンやハムなど)
・豚のエキスや豚の脂(ラードなど)
・調味料・添加物に含まれる豚由来成分(ゼラチンやコラーゲンなど)
などの提供にも気をつけなければいけません。
そして料理を提供する上で大切なことは、どの料理に豚肉が使用されていないのかを分かりやすく情報開示してあげることです。
例えば
・使用している食材をイラストや英語で表示する
・メニューの中に豚肉を使っていないコーナーを用意する
・ムスリム専用のメニューを用意する
などが良いでしょう。
実際、私の友人のキルギス人も「情報がしっかり表示されていれば安心してお店に行くことができるのに!」と話していました。
また、お肉はハラル処理されていない可能性があるため、あまり好まない方もいるのでベジタリアンメニュー(野菜のみを使用した料理)を多めに用意してあげると喜ばれるはずです。
アルコール
次に知っておくべきことは「アルコール」の提供がNGだということです。
もちろん飲料用だけでなく調味料(みりんや料理酒など)にも注意が必要です。
料理を提供する上で大切なポイントは豚肉と同じになるのですが、料理へのアルコールの使用有無をしっかりと情報開示してあげることです。
まずはこの2つのことを理解することが、ムスリムを受け入れていく上での第一歩となります。
実際のメニュー作成の際には以下の記事が参考になりますのでお読みください。
2.礼拝において大切なこと
次には礼拝に関する対応です。
ムスリムの方はイスラムの教えで1日5回(夜明け前、昼、午後、日没時、夜)の礼拝を行うことが決まっています。
※旅行中は1日3回に短縮する人や簡略化する人もいるそうです。
しかし日本では街中にモスクや礼拝場所がほとんどないため、旅行中に礼拝をする場所を見つけることができず困っているのです。
だからこそ礼拝部屋を用意してあげることができればもっとも良いのですが、ムスリム向けの専用の礼拝部屋を作ろうと思うと大変ですよね。
礼拝のための専用の部屋は必要ない!?
多くの人たちが礼拝をする場所と言えば、礼拝部屋を用意しなければいけないと思いがちですが実はそうではありません。
礼拝は清潔で静かな場所であればどこでお祈りしても良いとされているのです。
専用の部屋があるに越したことはありませんが、例えば、土間でも屋外でも畑でもどのようなスペースでも礼拝は可能なんです。
そのため礼拝をしたいという申し入れがあれば、空いているスペースを貸してあげるだけでも、喜んでくれるはずです。
大切なことはムスリムの人たちの文化を理解し、おもてなしの心を持って丁寧に接してあげることです。
では受け入れ面で大切なことに続いて、集客方法について紹介していきたいと思います。
3.集客において大切なこと
せっかくムスリムの方を受け入れる準備ができても、知ってもらわなければ来てもらうことができません。
ムスリムの集客方法について、個人客と団体客に分けて紹介します。
個人客の集客
個人客の集客にはインターネットを活用するのが一番です。
旅行者や日本在住のムスリムの人たちが利用している代表的なサイト(アプリ)を紹介します。
【Halal Gourmet Japan】
https://www.halalgourmet.jp/ja
このサイトの特徴は、「料理に関する条件」や「店舗設備に関する条件」を細かく選択して、お店を絞り込むことができることです。
そのため、その人の求める基準に対応できるお店のみを探すことができるので、安心して来店できるようになります。
また、お店の方にとっても対応できないムスリムの方の来店を事前に防ぐことが出来ることがメリットです。
掲載に関するお問い合わせはこちらから
※無料プランはハラル対応状況をお尋ねするアンケートに回答するだけで簡単に掲載されるそうです。
【Halal Navi】
http://www.halal-navi.com/
こちらのサイトの特徴は実名のクチコミが掲載されていることです。
実際に来店されたムスリムのクチコミがあるので、同じ宗派や国の人が利用しているクチコミがあれば、それだけでお店への安心感や信頼へと繋がります。
掲載はスマホのアプリから行えます。
※アプリをダウンロードし、ユーザー登録することでお店の掲載が可能になります。
また、アメリカ発のサイトで世界中のハラルレストランを検索できるZabihahといったサイトもあります。
他にも、トリップアドバイザーなどのクチコミサイトにきっちりと掲載しておくことも重要です。
また、お店の情報を掲載する際は厳格なムスリムの方々に誤解を与えないようにするためにも、
・ハラル認証の取得の有無
・対応できること、対応できないこと
をしっりと明記することが大切です。
まずは今回紹介したサイトにお店の情報を掲載をして、認知をしてもらうことが個人客を集客するための第一歩となります。
団体客の集客
団体客を集客したい場合は旅行会社から送客してもらうことが、もっとも最適な方法です。
旅行会社からの集客方法については過去の記事に詳しく記載していますので参考にしてください。
スリムの団体旅行を請け負っている旅行会社の方によると、ムスリムに対応している飲食店はまだまだ数が少ないため、探すのには苦労しているそうです。
今から対応しておくことで、団体客を獲得する大きなチャンスに繋がるはずです。
また個人客と同じく、厳格なムスリムの方々に誤解を与えないようにすることが大切です。
旅行会社から問い合わせが来た時は、対応できること対応できないことをしっかりと伝えましょう。
日本を訪れるムスリムが急増中!?
また最後に、現在の日本における訪日ムスリム市場についてお伝えします。
訪日観光客数TOP20の国の中から人口あたりのムスリム比率の高いTOP5の国を表にしました。
※ムスリム比率はアメリカの調査機関Pew Research Centerの発表しているデータを参照しました。
また、JNTO(日本政府観光局)が発表している訪日観光客数をムスリム比率で計算してみると、この5ヶ国だけで約60万人(薄い赤色の箇所の数字)にものぼります。
また、この表の5ヶ国以外の国からもムスリムの旅行者が来ています。
そして日本に住んでいるムスリムが約20万人いると言われていることから、すべてを合計すると約100万人ぐらいの市場規模と言えそうです。
※ただ、あくまでもの数値は参考値です。なぜならフランスなど国によってはムスリムといっても移民が多い国もあり、訪日フランス人観光客のムスリム比率は低いことが予想されるためです。
そして中でも注目したいのが昨年同月と比較して伸び率の変化が大きく、注目すべき国(青色の箇所の数字)がインドネシアとマレーシアで、2016年は推定で20万人以上の人たちが訪れたと考えられます。
この2カ国は近年、日本を訪れる人が急激に増えています。
2015年から2016年にかけての伸び率はインドネシアが32.1%、マレーシアが29.1%と2ヶ国とも高い伸び率を記録しました。
そして世界には約20億人のムスリムがいると言われており、そのうちの約10億人以上がアジアに住んでいると言われています。
日本を訪れるムスリムが増えてきていますが、それでもまだほんの一握りの人たちしか訪れていないのが現状です。
それはムスリムにとって日本は食事や礼拝において安心して旅行できる国ではないからです。
そのため、海外旅行に行くことのできるムスリムの人たちは、同じイスラム圏の国を旅行先に選ぶことが多いそうです。
迎え入れるための環境がしっかりと整えば、もっと多くのムスリムが日本を訪れてくれるはずです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ムスリムの対応と聞いて、ハードルが高くて難しいと思っていた方も、もしかしたら対応できるかもしれないと少しは思っていただけたのではないでしょうか?
今回の記事で大切なことは、
・ハードルが高いと思われがちなムスリムの対応も、ターゲットを絞ることで対応可能になるということ
・安心して食事をしてもらうためには、情報開示をしっかりとおこなうこと
・ムスリムの人たちの文化を理解し、おもてなしの心を持って丁寧に接してあげること
です。
これらのポイントをしっかりと理解し、実践していくことができればムスリムのお客さんがあなたのお店にも来てくれるようになるはずです。
最後になりますが、日本ではムスリムの方に対応しているお店がまだまだ少ないのが現状です。
しかし日本を訪れるムスリムの方は着実に増えてきています。
彼らが安心して旅行を楽しんでもらえるようになれば、もっと多くの人たちが日本を気軽に訪れるようになるでしょう。
今からムスリムについての基本的な知識を学び、できることから少しずつ対応していきませんか?
そうすることで、ムスリムの方の集客に繋がり、あなたのお店の売上UPに繋がっていくはずです。
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